漫画家・浅見理都が刑事弁護人に聞くザイヤのオオカミ

第3回 久保有希子弁護士に聞く(2)

常に謙虚であり続ける

どんな話でも決めつけず、受け止める


少年事件と刑事事件の違い

 久保先生は、少年事件はやられますか。

 受けることはあります。

 今まで会った弁護士の方では「少年事件は、すごくやりがいを感じる」「特別に何か感じる」と言う方が多かったのですが。

 それは結構分かれると思います。例えば、依頼者の更生に力を入れているタイプの弁護士は「少年事件が好き」と言う人が多いかもしれません。

 なるほど。

 「少年は、まだいろいろ可塑性があってやり直せる」ということで、「少年に寄り添って支援し、環境を調えて更生をうながす」と考えるタイプの人が多い。そういう傾向はある気がします。

 久保先生は、成人の刑事事件と少年事件の、どちらに力を入れているとかありますか。

 私は少年事件に特別力を入れているわけではありませんが、捜査段階でやるべきことは成人と共通しています。少年事件をやっていないわけではなく、弁護士会の少年付添人名簿に登録しているので「依頼が来れば、もちろんやります」という感じです。

 そこは弁護士の間でも分かれるところなんですね。

 そうですね。といっても、対立しているわけではありませんし、何にやりがいを感じるのかは、本当にその人の好みだと思います。

 また、成人の刑事事件でも「否認事件ならできるけど、『認めたうえで更生を』というのは一切やれません」というタイプの弁護士もいます。「とにかく、悪いことをやった人を弁護できない」と。やはり、自分の価値観に合う合わないとか、そういう人もいるんだという感じです。

 ただ、依頼者のために何をするべきかを考えて、ベストを尽くすことは同じだと思います。

仕事の基礎は、企業法務の事務所で学ぶ

 久保先生は最初、企業法務の事務所に行かれましたが、何か理由があったんですか。

 やりたいことが本当にいろいろあって、どれも面白そうだなと思いました。大阪での弁護修習では、すばらしい刑事弁護人の活動を見て感動しました。

 一方、大学のゼミでは会社法を選択したので、企業法務も面白く(今もやっていますけど)、あとからだとやれないかもしれないものを選んだという面はあります。

 当時は、刑事事件の事務所に入ったうえで、あとから企業法務の事務所に入ることがあまり想定できませんでした。だから、まずはやりたいと思ったことをやってみる。それから、他の進路に行きたいと思えば、そのときにまた考えればいい。そのときはそう判断して、企業法務を選びました。

 企業法務から刑事弁護へというルートは珍しいですか。

 たぶん珍しいと思います。最初に入ったのが、いわゆる四大法律事務所と言われる大きな事務所でした。そういう所に入る人は、企業法務にしか興味がない人も多いです。その中で刑事事件に興味を示す人が、単純に層として少ない。その意味で、ルートとしては少ないですね。

 これから弁護士になる方は、久保先生のようなキャリアもあるんだと参考になると思います。個人的な興味ですが、企業法務でバリバリやっている人って、どういうタイプの人が多いんですか。

 私がいた事務所は、やはり緻密な人が多かったですね。徹底的に調査して、書面を書くのも緻密にという感じの人が多かったです。当時、そこでお世話になったパートナーや先輩方は、今でも、本当に尊敬しています。

 最初に入った事務所では、よい同僚・先輩方と出会うことができましたし、仕事の仕方を学ぶことができたので、自分の選択はま違っていなかったと思います。

(つづく)

(2021年06月28日公開) 


こちらの記事もおすすめ