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2019.03.16

「東アジア薬物依存者回復支援者(DARS)養成セミナー」を開催【犯罪学研究センター】

薬物依存者の回復支援活動を国際化するためのキック・オフ

2019年2月23日~2月24日、犯罪学研究センターは「東アジア薬物依存者回復支援者(DARS)養成セミナー 〜Experts’ Seminar Drug Addicts Recovery Supports in East Asia 2019〜」を開催しました。
【イベント概要>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-3017.html

この企画では、民間団体主導の「薬物依存からの回復支援スキーム」を東アジア地域において展開するため、日本国内・東アジアの各国から研究者、実務家、支援者をお招きしました。また、2日間に渡るセミナーには、日本各地・東アジアの各国から、のべ150名を超える方々にご参加いただきました。

第1日目の冒頭、石塚伸一(本学法学部教授・犯罪学研究センター長)が企画趣旨を述べ、その中で「本セミナーは、東アジアにおける薬物依存からの回復についての最新の情報と理論を学ぶため、薬物問題の現場・回復支援の現場で働く人たちが立場を超えて、一堂に会し、意見を交換する回復支援者養成のための公開セミナーであること。また、薬物依存者の回復支援活動を国際化するためのキック・オフであること」を説明しました。


石塚伸一(本学法学部教授・犯罪学研究センター長)

石塚伸一(本学法学部教授・犯罪学研究センター長)

つづいて、1日目前半は『日本における市民主導の回復支援』というテーマのもと、市川岳仁氏(NPO法人三重ダルク)、尾田真言氏(NPO法人 アパリ)、谷家優子氏(姫路少年刑務所/大阪心理教育センター)、安髙真弓氏(日本社会事業大学大学院)、西念奈津江氏(岡部診療所)、五十嵐弘志氏(NPO法人マザーハウス)より、報告がありました。
様々な立場からの支援について紹介されました。立場によって支援の方法は様々であるけれど、「当事者のことを第一に考える」という共通点がみえました。

1日目後半は、『東アジア地域における市民主導の回復支援』というテーマのもと、プラパプン・チュチャロエン氏(タイ/マヒドン大学)、ベンジャミン・レイヤス氏(フィリピン/デンジャラス・ドラッグ・ボード)、スーヤス・ラジャハンダリ氏(ネパール/ザ・リカバリング ・グループ)、コーリー・ジェン氏(台湾/財團法人中國信託反毒教育基金會)、チョー・スンナム氏(韓国/乙支大学)、ディビッド・ブルースター(龍谷大学)より、報告がありました。
タイ・フィリピン・ネパール・台湾・韓国・日本の東アジアの各国で行われている薬物政策について説明がなされました。


プラパプン・チュチャロエン氏(タイ/マヒドン大学 教授)

プラパプン・チュチャロエン氏(タイ/マヒドン大学 教授)


ディビッド・ブルースター(龍谷大学 犯罪学研究センター 博士研究員)

ディビッド・ブルースター(龍谷大学 犯罪学研究センター 博士研究員)

2日目前半は、『東アジア地域における治療プログラム』というテーマのもと、長谷川直実氏(デイケアクリニックほっとステーション)、原田隆之氏(筑波大学)、加藤武士氏(木津川ダルク)、近藤京子氏(PJH設立準備委員会)、チャンチャイ・トングプラニット氏(タイ/タンヤラック コーンケン病院)、マリアノ・ヘムブラ氏(フィリピン/ドン・ホセSモンフォート・メディカル・センター・エクステンション病院)、チョー・スンナム氏(乙支大学・国立法医学病院)による報告がありました。
条件反射制御法、マトリックス・プログラム、12ステップなど、わが国で用いられているプログラムについての説明、それぞれのプログラムの実態について報告がなされました。続いて、タイ・フィリピン・韓国で行われている薬物依存症に対する治療について、報告者が所属している病院において行われている治療について報告がされました。


チャンチャイ・トングプラニット氏(タンヤラック コーンケン病院 副院長)

チャンチャイ・トングプラニット氏(タンヤラック コーンケン病院 副院長)


チョー・スンナム氏(乙支大学 教授/国立法医学病院 院長)

チョー・スンナム氏(乙支大学 教授/国立法医学病院 院長)

2日目後半は、「“えんたく” ※1で分かち合う共通の課題〜東アジアの回復支援の未来〜」というテーマで、“えんたく”会議を行いました。

大熊啓介氏(NPO法人マザーハウス)から「回復中… ①お金の問題 ②依存先が他に変わるだけ? ③自分の時間の作り方とは?」という問題提起がなされました。
センターテーブルには、東アジアの各国から、研究者、医師、臨床心理士、回復施設スタッフなど様々な立場の方が集まり、オーディンエンスとともに、問題を共有しました。“えんたく”を国内・国外に広げるスタート・ポイントとなりました。


“えんたく”会議のようす/司会:土山 希美枝 (本学政策学部教授)

“えんたく”会議のようす/司会:土山 希美枝 (本学政策学部教授)


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補注:
※1 “えんたく”:
“えんたく”は、依存問題の解決に際してどのような問題や課題があるかの共有を目的としています。アディクション(嗜癖・嗜虐)からの回復には、当事者の主体性を尊重し、回復を支える様々な人が集まり、課題を共有し解決につなげるためのゆるやかなネットワークを構築していく話し合いの「場」が必要です。この「場」を“えんたく”と名づけ,様々なアディクション回復支援に役立てることを目指しています。
※“えんたく”は、特定非営利活動法人 みらいファンド沖縄の『沖縄式地域円卓会議』から多くの示唆を得ています。