困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで<br>第7回

困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで
第7回

1種類だけじゃない! 指紋を検出する方法

齋藤健吾 株式会社齋藤鑑識証明研究所代表


 みなさま、こんにちは! 齋藤鑑識証明研究所の齋藤健吾です。

 私は、初めて会う方に自己紹介をする時、「民間で指紋鑑定や筆跡鑑定をしています」と言います。すると、「でっかい耳かきみたいな道具を使って、指紋を出しているのですか?」と質問されることがよくあります。この道具はダスターハケと言いますが、実際に使うことはあまりないですね。というのも、ダスターハケを使った指紋検出は、他の検出方法を比べて、検出効果が若干劣るからです。

 あれは、主に現場に出張して、持って帰れない物(建物の壁や扉、車など)から指紋検出するときに使う道具です。みなさんが指紋検出といったら、ダスターハケのイメージが強いのは、現場で指紋検出している場面をニュースなどで見る機会が多いためです。実際は、現場から物件を持ち帰って、検出することが多いです。

 今回は指紋の検出方法について、事例を交えながら紹介していきます。

1 事案の発生

 30代女性の山田さん(仮名)は昨年、父親を亡くし、兄弟3人でどのように相続するのかを話し合っていました。山田さんは長女ですが、兄弟の中では一番末っ子にあたり、長男、次男、山田さんの順番です。長男が父親の遺言書を預かっていると言って、手書きの遺言書を提出しましたが、次男と山田さんは、これが本物かどうか信じられずにいました。

 長男は、確かに父親から預かったし、遺言書に指紋が押捺されているから、本物で間違いないと言っています。しかし、次男と山田さんは書いてある内容と文章の言い回しを見て、父親が書いたとは思えないため、なかなか首を縦に振れないでいました。

 そのため、話し合いは平行線となり、結局は遺言書に押捺されている指紋が本物かどうかを確認して、本物なら遺言書のとおり、相続しようということになりました。

2 指紋鑑定の依頼

 兄弟から指紋鑑定の依頼を任された山田さんでしたが、指紋鑑定をする当てはありませんでした。ダメもとでインターネットで検索してみると、弊社のホームページが見つかり、依頼をいただきました。

 山田さんと指紋鑑定の進め方を相談しました。今回の鑑定事項は遺言書に押捺された指紋が、お父さん本人の指紋であるかどうかを特定することです。これをするには、お父さんの指紋が必要になります。そのため、以下のような手順で鑑定を進めることになりました。

① お父さんが生前に触っていたものを入手する。
② 入手した物件からお父さんの指紋を確保する。
③ お父さんの指紋と遺言書に押捺された指紋を照合する。

 早速、山田さんにお父さんが生前使っていたモノを入手してもらいますが、この選定もなかなか難しいものです。例えば、湯飲みコップは毎日触っていてもスポンジで洗ってしまうと指紋が消えてしまいます。また、歯ブラシやパソコンのマウスなどは、確かにたくさんの指紋が付着していますが、触る頻度が多く、面積が狭いため、指紋が重なってしまい鑑定できる指紋の確保が難しいのです。

 そのようなことに注意しながら入手した物件は、日記張、写真、小型マッサージ器でした。

3 指紋検出の実施

 物件から指紋を検出する方法は、多くの種類があります。どのような方法が最適かは、物件の素材、色、形状などを見て、決定しています。そのため、1つの方法ですべての物件を検出するわけではなく、一つひとつ異なる方法で指紋を検出します。

 ここでは、代表的な指紋の検出方法を3つ紹介します。

(2024年04月15日公開)


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