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『オアシス・インタビュー』第4回

【前編】地域との共生を目指す官民協働運営の刑務所

美祢社会復帰促進センターの取組み


—— そのプログラムは、どういう期間で行っているのですか。

手塚 それは教育の内容によって違いますけど、3カ月コースとか、6カ月コースで行っていきます。

—— それは、受刑者が選ぶのですか。

手塚 職業訓練は自ら選択できますけど、教育については、国のほうで、彼らのことを見ながら、「彼らにはこれがいいだろう」ということで、教育を受けさせています。

—— それは、1年ぐらいのタームで行っていくのですか。

手塚 そうです。

—— そういう教育プログラムに入っている民間の会社には、小学館集英社プロダクションがありますね。

手塚 美祢は小学館集英社プロダクションですし、島根あさひはSSJと言って、大林組の子会社が担当しています。

 成人教育は一般社会ではあまりなかったので、私は、刑務所の教育を本当にできるかどうか心配していました。民間会社は、さまざまな教育に携わっていますので、成人向けのプログラムをいろいろと作ってもらいました。そういう面では、刑務所独自のプログラム以外のものを受け入れてよかったのではないかと思っています。

 一般的な教育として、国で決められているのは、一般改善指導と特別改善指導です。一般改善指導は反犯罪性思考プログラムの実施で、特別改善指導は犯罪類型に対応した指導です。美祢では、被害者の視点を採り入れた教育、薬物依存離脱指導、交通安全指導の3種類があります。

 一般改善指導は、全受刑者に行わせるもので、いわゆる行動適正化指導を行っています。それに付け加えて、今言った社会貢献活動プログラムが主なものです。

—— 手話基礎科は、具体的にはどんなことをするのですか。

手塚 手話基礎科は、視覚障がい者に講師で来てもらって、手話の役割と基礎を伝えていただきながら、視覚障がい者に対する理解を深めることを目的としています。そうすることによって、受刑者自らが自己中心主義からの脱却、つまり他者への思いやりの心や偏見差別との対峙を促します。さらに挫折感の克服、つまり、ハンディを克服する生き様の紹介、福祉の理念の理解につながります。最後には、手話で簡単な会話ができるようにします。

手話基礎科
手話基礎科

—— そうしたプログラムの成果はどうでしょうか。

手塚 手話基礎科では、こんな例がありました。センター生(受刑者)が、最終回の講義で、講師たちへのお礼として、手話で歌を贈りました。これはセンター生が自主的に行ったもので、ある視覚障がい者の講師は「自分は障がい者という立場から人様に迷惑をかけるばかりでしたが、今日は感謝された。この経験は初めてだった」と涙を流して喜んだそうです。一方、センター生の一人は「私も社会に帰れば違う意味で障がい者だ。でも障がいをもっていても、しっかり生きている人がいることを思い出してがんばりたい」という感想文を書いていました。このことがとても印象に残っています。大きな成果だと思います。

—— センター全体として成果をどう見ていますか。

手塚 成果をどう見るかは非常に難しいことです。プログラムが始まったときと終わったときの意識調査を行っています。これは非常に難しい調査ですけど、それで測定しています。ただ、そんなことを言っても、一般社会の人は分からないですから、一つの目安は再入率です。

 今、犯罪対策閣僚会議で、「出所後2年以内の再入率を20%削減しなさい」と言われていますので、2年以内の再入率を見ながら、美祢社会復帰促進センターとしてはそれも目安にしています。国全体では、今、17%ぐらいまで下がっています。美祢社会復帰促進センターだと5%ぐらいというところです。A指標刑務所(犯罪傾向が進んでいない受刑者を収容する刑務所)でも7~8%ぐらいですから、他施設に比べて非常に低いということは言えると思います。

 ご存じのとおり、再犯防止は、社会復帰促進センターの教育だけの問題ではないのです。実際、社会環境のほうが影響は大きいのかもしれません。ただ、社会復帰促進センターとしても、効果がどう表れるかは検証する必要があるので、一応の目安としては再入率を使っています。

—— 全国平均的には17%ですから、美祢の5%という数字は、すごい成果があがっていることになりますね。

手塚 0%ではなかったですけど。

—— 意地悪な質問をすると、犯罪傾向は進んでいないのだから、再犯率は低いのは当たり前だという評価をされると思います。

手塚 そうですね。ただ、A指標刑務所と比べても低いのですから、教育なり、職業訓練にお金をかければ、それなりの効果があるのではないかと、私は思っています。

 美祢にしろ、島根あさひにしろ、PFI刑務所の教育と職業訓練は、ほかの施設とは比べものにならないぐらいカリキュラムが充実しています。刑務所で職業訓練を受けたことがあるのは、出所する者の7~8%ぐらいで、美祢や島根あさひは100%ですから、そういう効果はやっぱりあるのかなと思っています。

(2020年05月27日公開) 

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