2 刑務所の一日のサイクル

—— さて、刑務所の一日の仕事はどういうサイクルでまわっているのですか。
手塚 原則は、昼間は受刑者は工場に行って作業をしていますので、工場には担当がいます。その担当は、採用になってから15年から20年ぐらいたった人が大体なっています。
—— そうなんですか。
手塚 若い頃は、その副担任に就きますので、昼間は、彼らの作業状況を見て回っているということです。
夜になると、今度は夜勤になります。夜勤では、彼らが使用している居室を巡回して見て歩く仕事が主なものです。ですから、日常生活の中で、いろいろなやりとりが出てくることになります。
主に、書信の増発や、医務診察など願い事みたいなものは、昼間のベテランの担当が大体聞くことが多いのですけど、中には、そのとき付いた職員に聞いてくる者もいます。ですから、その中で、彼らの状況がだんだん分かってくることになります。
—— 受刑者に対しては、一人一人に担当が決まっているのですか。
手塚 工場担当は大体50名で1人ぐらいです。100名近く、50名を超えたら2人とか、そういうふうに昼間配置の人数は決まっています。ですから、一人で多くの受刑者を持つことになります。
—— 学校で言うとクラスみたいな感じですね。
手塚 うちの業界では、そのことを「担当制」と呼んでいますけど、学校と同じです。ですから、一人の人間が、受刑者の全てを知ることになります。多分、これは日本独特の刑務所の手法かもしれません。
—— 50人というと、かなりの人数で、その一人一人を知るのは大変な努力をしないとできない気がします。
手塚 ですから、休憩で処遇事務所に帰ってきたときに、彼らの身分帳を見て、家族状況、学歴、手紙や面会の内容などを全部調べます。そうしないと、彼らが何を考えているのかは分からないです。そこが、一番大切なところだと思っています。
——5月に本を出される予定だと聞いていますが、どんな内容ですか。
手塚 私は、1979年に札幌刑務所の看守として拝命してから、本庁での矯正局で予算関係の仕事を17年間、さらに美祢社会復帰促進センターや島根あさひ社会復帰促進センターなど刑務所の現場の仕事をしてきました。とくにPFI方式による官民協働の刑務所の立上げのプロジェクトにも携わってきました。そうした体験に基づいて、みなさんが持っている閉じ込めて置くだけという従来の監獄のイメージとはまったく違う刑務所の最新の姿を紹介しています。そこでの刑務官による受刑者に対する再犯防止のための働きかけや再犯防止プログラム、刑務所建設・運営のための地元住民との交流を知ってもらうことができるのではないかと思っております。
(2020年05月27日公開)