連載 刑事司法における IT 利用の光と陰

刑事司法におけるIT利用の光と陰
第9回

裁判記録のオンライン公開

指宿信 成城大学教授


1 はじめに

 2021年春、日産元会長カルロス・ゴーン氏の逃亡を幇助した疑いにつき米国で逮捕された2人の米国人に対する捜査資料が、NHKアメリカ総局により入手されたと報じられました((NHK Web特集「ゴーン元会長逃亡事件”極秘”捜査資料がネットに?」2021年3月5日。))。後に紹介する米国連邦裁判所の提供するPACERという訴訟記録閲覧システムを通じて、米国人に対する裁判に提出されていた日本の捜査資料までダウンロードできたという報道です。この報道をきっかけにして、日本における裁判記録へのアクセスのあり方について疑問が示されるようになりました。

ゴーン氏逃亡事件捜査につき筆者が同様に入手した米国人に対する逮捕状(墨塗り──筆者)

 2022年秋、今度は、そうした裁判記録へのアクセス機会のある米国と真逆の状況にある日本の実情が明らかになりました。日本各地で重要な裁判記録が次々と廃棄されていることが報じられ、神戸連続児童殺傷事件の記録((https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202210/0015737186.shtml))やオウム真理教に対する解散命令請求に関連する資料……

(2023年03月01日公開)


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