連載 裁判所書記官が見た刑事弁護

裁判所書記官が見た刑事法廷 第12回

無罪時の補償 費用補償

中村圭一 元裁判所書記官


 前回、弁護人のみなさんもあまり経験することがないであろう「逆転無罪判決」について触れましたが、「逆転」ではない「無罪判決」(1審での無罪判決)であれば、遭遇する可能性は幾分高くなるのではないかと思います。

 そこで、今回は、その「無罪判決」が確定した後の補償についてご説明したいと思います。

 刑事訴訟法188条の2において、「無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であった者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。」と定められています。これを「費用補償」と言います。この費用補償請求は、元被告人であった者ができます。費用の範囲と内容は、本人が公判準備及び公判期日に出頭するに要した旅費・日当・宿泊料、ならびに弁護人が公判準備及び公判期日に出頭するに要した旅費・日当・宿泊料・報酬です(刑事訴訟法188条の6)。同法188条の3において、この費用補償は、無罪の判決をした裁判所が行うことと、この請求は無罪の判決確定後6か月以内に行わなければならないことが定められています。

 通常、上訴された事件の記録は、最後には第1審に戻ることになるため、この手続も第1審で行うと思いがちですが、「無罪の判決をした裁判所」で行うと規定されており、私も「控訴審でやらなければならないのか……。」と正直驚きました。

 裁判に要した費用を書記官が算定して、裁判官に対して、書面で報告するという形をとり、その書面の内容を受けて、補償する費用額を裁判官が最終的に判断するということになります。10年以上前の話になるので、詳細については覚えていませんが、様々な項目について算定を行わなければならず、かなり大変な業務だったこ……

(2023年03月28日公開)


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