連載 裁判所書記官が見た刑事弁護

裁判所書記官が見た刑事法廷 第13回

「裁判員候補者名簿記載通知」の発送

中村圭一 元裁判所書記官


 裁判員裁判を実施するために、裁判員裁判に参加する前年の11月頃、裁判員候補者全員(全国で約20万人以上)に名簿記載通知を一斉に郵送することになります。私は、最高裁刑事局内で、その通知を送付する係で仕事をしていました(当時は、「裁判員制度企画第一係」と呼ばれていました)。

 裁判員候補者の名簿記載通知に同封する書類やパンフレット等のデザインから、印刷業者とのやり取りなど全般を担当しました。名簿記載通知の発送は、一斉に行うため一大イベントになるのですが、その作業が円滑に行われているかどうかを確認するために、発送当日は、ある大きな郵便局に直接出向いたりもしました。

 じつは、最高裁に異動して、この担当になる半年前(前年の11月)に、私本人宛てにこの裁判員候補者名簿記載通知が送られてきたのです。これらの通知は、各市町村の有権者から無作為で選ばれるため、裁判官であろうと裁判所職員であろうと、容赦なく送られてくるわけです(もちろん、裁判所の職員であるため、実際には裁判員にはなることができません〔裁判員法15条第1項11号〕)。送られてきた当時も、なかなかの運を持っているなと驚いたわけですが、その半年後に、その通知に関する業務を自分で担当することになった際には、もっと驚きました。ある意味、運命のようなものを感じました。

 ただ、この係での実際の業務としては、既に裁判員裁判がスタートして数年になるため、一から何かアイデアを出すということはなく、送付物(パンフレット等)で気が付いたところをマイナーチェンジして改良するような業務がメインとなりました。名簿記載通知のサンプル等が何年に送られたものかがわかりにくかったので、通知の封……

(2023年05月23日公開)


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