困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで<br>第14回

困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで
第14回

指紋がいつ付いたかがわかるのか?

齋藤健吾 株式会社齋藤鑑識証明研究所代表


 こんにちは! 株式会社齋藤鑑識証明研究所代表の齋藤健吾です。

 今回も「指紋鑑定」のディープな世界を、できるだけわかりやすく、そして楽しく、皆さんにお伝えしたいと思います。

 さて、今回のテーマは「指紋がいつ付いたかがわかるのか?」です。結論から言うと、死亡推定時刻のように、指紋が今から何時間前に、もしくは何日前に付いたかを特定することはできません。

 しかし、まったく予想できないわけではありません。指紋の向きや圧力、接触した場所、指の種類から、どのような行為で指紋が付いたのかを推測することができます。

 では、詳しく解説していきます。

1 指紋の色が薄いか濃いか

 指紋がいつ付着したかを推定する際に、単純に「指紋の色合いだけで判断できるのでは?」と聞かれることがあります。一般的に、色が濃いと新しい指紋、色が薄いと古い指紋と考えられがちですが、実際にはこのような推定は正確ではありません。

 まず、指紋の濃淡は、手の汗である指紋分泌物の量で決まります。指紋分泌物が多いと色が濃くなり、少ないと薄くなります。また、指紋分泌物はモノに付着すると乾燥して減少するため、時間が経つと色が薄くなります。

 なぜ、色合いから付着時期の推定ができないかを説明するために、以下のように条件を設定します。

【設定条件】
・指紋の濃さレベル1~10
・濃さは5日間で1レベル下がる

〇A指紋
 付着時の濃さレベル9
 15日が経過して現在の濃さレベル6

〇B指紋
……

(2025年05月28日公開)


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