再審法改正をめざす市民の会結成7周年記念集会「ノーモアえん罪 今こそ変えよう再審法」/再審法改正への決意と熱気が国会を動かす


再審法改正をめざす市民の会結成7周年記念集会の最後に、登壇者全員で、「変えよう再審法」「ノーモア!えん罪」のプラカードを掲げた(2026年5月20日、東京・文京区民センターにて。写真撮影:刑事弁護オアシス編集部)。

 再審法改正については、現在、政府案野党3党による議連案の2つの刑事訴訟法改正案が国会に提出され、5月26日に審議入りした。これから、本格的な論戦となるのは間違いない。

 政府案は、再審開始決定に対する検察官抗告の原則禁止(但し、例外要件という「抜け道」あり)は盛り込まれたが、再審請求の事前審査、限定的な証拠開示、開示証拠の目的外使用など、早期の冤罪救済からほど遠い内容である。

 一方、議連案は、中道改革連合、チームみらい、日本共産党が提出したもので、検察官抗告の全面禁止、幅広い証拠開示など昨年提出された超党派議連(えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟)案を土台にしたものである。

 審議入りする前の5月20日、東京都内で、再審法改正をめざす市民の会の主催で、同会結成7周年記念集会「ノーモアえん罪 今こそ変えよう再審法」が開かれた。会場180名、Web参加者65名の計245名が参加した。

 同会は、2019年5月20日、冤罪被害者、市民、弁護士、研究者、ジャーナリストらが中心となって、再審のルール作り、とくに①再審のためのすべての証拠の開示、②検察官の不服申立ての禁止、③再審における手続きの整備を目指して、結成された。毎年、再審の狭い門を開けた最高裁白鳥決定が出た5月20日に集会を開いている。

 国会で改正案の審議がはじまった。市民の会が目指す再審法改正が実現するか、いよいよ正念場を迎えた。

正念場を迎えた再審法改正、国会議員の決意

 すでに両法案が国会に提出されていることもあって、集会では、国会議員の発言に注目が集まった。

 集会の冒頭に、日弁連再審法改正推進室長の鴨志田祐美弁護士が再審法改正の現状について報告した。その後、井出庸生衆議院議員、稲田朋美衆議院議員、泉房穂参議院議員が挨拶した。国会で、政府案を冤罪被害者の早期の救済のためにどう修正していくか、それぞれ意気込みを語った。

 井出議員は「忸怩たる思いで、法務省案を了承した。国民の皆さんに開かれた国会の場で議論を続けること、そして世論の監視と批判を受けながら、法案の成立を図っていくという思いでいっぱいです。ここからがまたスタートです。党議拘束ということもありますが、これまで冤罪被害者のご苦労に少しでも応えていくことが、法案を取りまとめた者の責任です。国会審議では、国民の皆さんのお力を借りながら、当初の思いを実現してまいりたいと思います」と決意を述べた。

 稲田議員は、ビデオメッセージを寄せた。その中で「法務省案はご承知の通り、検察の検察による検察のための法律案だった。しかし、自民党の中で11回、32時間以上に及ぶ激論の末に、刑事訴訟法本則の中に、検察が即時抗告できないようにする規定を入れることができたのは、大きな成果でした。今後、証拠開示や検察官抗告禁止の例外規定を明確化するなど、国会審議の中でしっかり明らかにしていかなければならないことも多い。議連のメンバーと共にこれからも冤罪被害者の救済を早期に図ることができる法律成立のために頑張ります」と、国会での審議について語った。

 泉議員は、つぎのように証拠開示について触れた。「法律を作るのは誰か? 国会議員です。まだ(政府案は)証拠開示と証拠の目的外使用の禁止についてはそのままです。いろんな要件をなくして裁判所が幅広い証拠開示を命じられること、そして弁護人側が(再審請求)の取っ掛かりを持てるような証拠リストを見れるようにすること。この2つは絶対必要だ。他の国会議員と一緒になって法律を作り替えていくこと、私もその一端を担いたいと思います」。

「なぜ法制審案ではダメなのか」

 法務大臣が「再審制度の見直し」を法制審議会に諮問し、昨年4月に法制審議会─刑事法(再審関係)部会が立ち上った。ちょうど超党派議連が再審法改正案を作り上げたころで、その動きを牽制するかのようであった。異例の猛スピードで審議が進み、今年2月に改正要綱案が法務大臣に諮問され、前述の法務省案が出来上がった。

 諮問案の内容が具体化してきた昨年末、その内容が検察寄りで、冤罪被害者の早期の救済には繋がらないのではないかと疑問をもった刑事法研究者や、再審に関わった元裁判官などが、次々と声明や意見書を発表した。

「パネルディスカッション/なぜ法制審案ではダメなのか」で報告する、元福岡大学教授の新屋達之(左端)、大阪大学教授の水谷規男各氏(中央)、右端は司会の成城大学教授の指宿信氏(2026年5月20日、東京・文京区民センターにて。写真撮影:刑事弁護オアシス編集部)。

 集会のメイン企画である「パネルディスカッション/なぜ法制審案ではダメなのか」は、これらの声明や意見書が出来上がった経緯や内容について、成城大学教授の指宿信氏の司会で、大阪大学教授の水谷規男、元福岡大学教授の新屋達之各氏が報告し、熊本大学准教授の岡本洋一氏が審議会のあり方について意見を述べた。登壇予定であった中村進午(時事通信記者)氏が、会社の都合で出席できなかった。

 「再審法改正論議にあり方に関する刑事法研究者の声明」(2025年12月)の呼びかけ人の一人、新屋教授は「大学院のときに、1984年の松山事件の再審公判を全部傍聴する機会があった。再審はたいへんわかりにくい手続ですが、実際に再審公判を見てきた者として、今回の法制審の議論はひどいものであると実感した。最終的にどのように改正されるかはっきりしませんが、どんな制度でも、できてからも制度は動いていくものです。法律家というのは、法律ができあがったら思考停止に陥る傾向がありますが、そうしたことがないように市民のみなさんが専門家の尻をひっぱたいて欲しい」と要望した。

 「再審法の改正に関する意見」(2025年12月)を提出した研究者の一人、水谷教授は「意見書は、これまでに蓄積された再審研究の成果に基づけば、改正はこうなるのではないかということを法制審の学者委員に示しものです。意見書は報道もされて多くの反響をいただいたので、法制審の議論がたいへん偏ったものであるということを一般市民にもご理解いただけたのではないか。いよいよ国会での審議がはじまります。ここが正念場です。有権者が再審法をまともにつくれないような国会議員は要らんといえば、事態は変わります。これから必要なことは有権者が国会議員を包囲することです」と、決意を新たにした。

 「検察官司法」という切口で、法制審のあり方を研究している岡本教授は「(東住吉事件の冤罪被害者である)青木惠子さんが、『法制審の委員たちは再審法の専門家か?』という疑問をもっていますが、国立情報学研究所の論文検索システムで調べて見ると、法制審の学者委員・幹事のほぼ全員に再審法の論文はありません。その疑問は実証されています」と今回の法制審の学者委員を分析した。

 また、「閣議決定で、省庁出身者は任命しないという審議会のルールがありますが、法制審では検事が例外として任命されているという現実があります。できあがった改正案は検察寄りであると思います。しかし、こういうことで、法制審は要らないという声が大きくなることをおそれています。もし委員に検事を入れなければ法制審への多様な人材は確保できないというなら、『刑事司法専門のAI法務事務次官』でよいのではないか」と、審議会の構成のあり方を痛烈に批判した。

冤罪の早期救済を実現する再審法改正を

 冤罪被害者らも発言した。袴田事件の袴田ひで子さん(ビデオメッセージ)や日野町事件再審請求人の阪原弘次さんらが、政府案による改正を憂慮するとともに冤罪被害者の早期救済を実現する再審法改正を実現して欲しいと要望した。

 当日、進行役をつとめていた高校3年生のR.Iさんは、つぎのように冤罪に対する姿勢と明確な目標を力強く述べた。

 「最初は、『なぜ無実の人が有罪になってしまうのだろう』という疑問を持っていました。しかし調べる中で、それは制度の問題であることを知りました。長時間の取調べ、不十分な証拠開示、そして、再審開始決定が出ても検察の抗告によって救済まで何年も引き延ばされてしまう現実があります。冤罪は、一人の人生だけでなく、家族との時間や社会的信用、将来までも奪ってしまいます。たとえ無罪になったとしても、失われた時間は戻りません。私は、再審制度は、『間違いを正す最後の砦』であるべきだと思っています。司法への信頼は、『絶対に間違えないこと』ではなく、『間違えた時に、きちんと正せること』によって支えられるはずです」。

 「この問題を『法律家だけの問題』や『過去の事件の話』にしたくありません。冤罪は、社会全体の問題であり、これからの社会を生きる若い世代にも関わる問題です。だからこそ私自身も、将来は、冤罪の是正に最前線で関わる法律家を目指しています。 無実の人が、これ以上長い年月を奪われない社会にするために、実効性のある再審法改正が実現することを願っています」。

 集会は、最後に「無実の人を早期に救済する真の再審法改正を求めるアピール」を採択し、終了した。再審法改正実現への決意と熱気に溢れる集会であった。

(2026年05月28日公開)


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