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『オアシス・インタビュー』第4回

【前編】地域との共生を目指す官民協働運営の刑務所

美祢社会復帰促進センターの取組み


4 美祢社会復帰促進センターの日課

美弥社会復帰促進センター
美祢社会復帰促進センター

—— 美祢(みね)社会復帰促進センターでの業務内容について、もう少し詳しくお伺いいたします。 美祢では大体何人ぐらい収容されているのですか。

手塚 私がいたときは、定員が1,000名です。

—— 1,000名もですか。

手塚 最高で850人ぐらいを収容していました。美祢社会復帰促進センターは、犯罪傾向が進んでいない者を集めて、特に職業訓練や矯正教育を積極的に行い、犯罪ゼロを目指そうと立ち上げた施設なので、入所条件を他の施設よりさらに厳しくしていました。例えば、通算して3年以上就労した経験がある者とか、身元引受人が決まっている者、他人の生命、身体、財産に回復困難な犯罪被害を与えていない者ということで、非常に厳しく設定していました。

 ですから、平均しますと、年齢は36歳から40歳ぐらいの若い受刑者で、執行刑期が3年未満です。学歴は40%が高校卒で、さらに男子受刑者は大学中退以上が21%で、他の刑務所から比べると、非常に高学歴者が多いのも特徴でした。犯罪も、男子は、一番は窃盗ですけど、2番目は詐欺、横領、3番目に覚せい剤です。

 美祢の場合は女子も収容しています。女子は犯罪傾向の進んでいない者という縛りだけです。女子は、一般の刑務所とほとんど同じような犯罪で、1位が覚せい剤、2番目が窃盗、3番目に詐欺、横領という順番でした。

—— 850人ぐらいの受刑者をどのぐらいの職員で処遇するのですか。

手塚 刑務官は120名ぐらいで、非常に少ない人数です。業務比率から言うと、民間の職員が半分です。民間は、勤務形態がいろいろありまして、私がいた頃で、250人ぐらいいました。パート職員を使ったり、非常勤職員を使ったりしますので、常勤職員だけではないです。ただ、業務比率は半々で組んでいました。

—— 受刑者の一日の生活はどのようなものですか。

手塚 施設によって若干違いますが、7時ごろに起きます。食事して7時半から工場に行って8時から就業します。昼を挟んで、16時ごろまで仕事をします。帰ってきて17時ごろ夕食をとり、それから教育に行く者は教育に行って、1時間ぐらい教育を行っています。

—— 教育のプログラムに入るのは、18時くらいですか。

手塚 そういう場合が一般的です。ただ、それでは回っていかないので、就業時間中にも、ある科目については入れていきます。その時間は教育を行って、それ以外は作業を行います。ですから、「一般的な動作時限を言え」と言われると、非常に困ります。いろいろなパターンがあるということです。

 例えば、ボランティア啓発は11時ごろから12時ごろまで行っています。ただ、なるべく就業時間は確保しようということで行っていますので、そこが難しいところです。

—— 外の世界で言うと、残業しているみたいな感じで、時間がかなり押していますね。

手塚 そうですね。終わるのは19時ごろになることもあります。ですから、本当は就業時間内に、教育も全て行えればいいのですけどね。

—— まだそこまでは行ってないということですか。

手塚 これはなかなか難しいところです。PFI刑務所も、最初は、就業時間の中でも構わないという線引きがあったのですけど、今、また、「労働は8時間きちんとさせろ」となっています。

—— 8時間就労したら、かなりくたくたになっていますね。

手塚 なりますね。ですから、そこは難しいところです。ただ、職業訓練は作業ですから就業時間の中に入ります。ですから、職業訓練の中で、教育的な要素を採り入れたりしているところがあります。ただ、将来的には、教育も、いわゆる日課の中に入れたいと思っています。少年院はそうなっていますから。

5 美祢社会復帰センターのプログラム

—— 美祢社会復帰促進センターでは、社会復帰のためにどんなことを具体的にするのでしょうか。例えば、どういうプログラムがあるのでしょうか。

手塚 処遇の大きなものとしては職業訓練と矯正教育になります。必須の職業訓練は、「安全衛生・品質管理・環境配慮」(企業は利益追求だけでなく、安全衛生管理に万全を期し、品質管理と納期を厳守し、環境にも配慮しなければならないという企業理念を教える)、「手話基礎」、「ボランティア啓発」、「ビジネス能力修得科」の4種目で、全ての受刑者が受講できるように組んでいます。選択できる職業訓練は、「販売士」、「医療事務」、「ホームヘルパー」、「DTP」、「プログラム・システム設計」、「フードコーディネーター」(フードコーディネーター3級が取得可能な知識を習得できる訓練で、調理師補助として食材の切込みなど仕込みの技術を取得できる)など10種目、計14種目を受講可能にしています。

 従来、資格取得に偏り過ぎていたところがありますが、そうではなく、社会の労働需要に合致した能力を身につけさせようということで、就労を視野に入れた職業訓練を選択しました。

 矯正教育については、大きな特徴として、社会貢献活動プログラムを多く採り入れたことです。これは何かというと、点字科、手話基礎科、ボランティア啓発科などを入れたことです。なぜこれらを入れたかというと、受刑者は、一般的に、「自己評価が低い」と言われています。それは、社会でいろいろ失敗して、社会からマイナスの評価を受けてきたためです。

 刑務所に入ることによって、釈放後はさらに自己評価が低くなるので、そのまま何もせずに社会に帰すと、自暴自棄になって、罪を再び犯すことになる恐れがあります。ですから、マイナスのラベリングを剥がしてやらないと、彼らが、社会のことや被害者のことを考えられないのではないかという発想からです。

 そういう発想から、社会貢献活動プログラムを行っています。成功例を社会に認めてもらうことによって、彼らのマイナスのラベリングを剥がしてしまおうというわけです、例えば、点字の本を作って寄贈したり、ボランティア啓発ではわらじを作ってみたり、いろいろなものを作って老人ホームに持っていったりします。すると、そこからお礼の手紙が来ますので、それによって、彼らの負の意識を変えてやろう。そういう取組みを行っています。

(2020年05月27日公開) 

用語解説

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