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『オアシス・インタビュー』第4回

【後編】地域との共生を目指す官民協働運営の刑務所

美祢社会復帰促進センターの取組み


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7 最近の刑務所の課題とは

—— 話題を変えますけど、刑務所の問題として、今、高齢者の収容が多くなってきています。それに対してどう対処するかも話題になっています。手塚さんはその点についてどんなふうに考えていますか。

手塚 確かに高齢受刑者が年々増えていますし、今、心配なのは、65歳以上の受刑者で、認知症の傾向のある者が17%ぐらいいます。全国で言うと、1,100人ぐらいいるのではないかと推計されています。それらの者をどう処遇していくかが大きな課題です。認知症の者は、単独室に入れておくと、その傾向がどんどん深まっていきますし、ときには、「暴力的」になっていきます。ですから、今、刑務所では、そういう者を集団の中で処遇しています。

 実を言うと、一般工場は就業時間(8時間)が決まっているので、なかなか難しいのですが、養護工場を造り、就業時間を短く(6時間)して、なおかつ、軽作業を行っています。そのほか、設備的なものも変えなければいけないということで、通路のスロープとか、手すりを整備しています。

 それから、トイレも非常に大きな問題で、和式トイレから洋式トイレに変えないと生活できません。あと、風呂も手すりのあったものでないとなかなか難しいということです。今、高齢者を収容する刑務所で、そういうものを改修しています。

 それだけではまだちょっと足りないので、今後は、身体機能が低下した者、あるいは認知症になった者にケアのプログラムを導入する必要がありますし、そのためには、専門的知識を持った者を入れないと難しいのではないかと思っています。

 府中刑務所は高齢者がたくさんいますが、所長のとき担当職員を高齢者に配慮した施設に出して、研修させました。そうすると、意識が変わります。例えば、いろいろなものができない受刑者がいると、前は、職員は怒鳴っていました。「なぜできないんだ。やれ」と言っていましたけど、そういう施設で研修させると、「あ、病気なんだ」と、非常に親切になります。そういう面では、専門的な人たちも入れて処遇していかなければならないと思っています。

 もう一つ、知的障がい者も非常に増えてきています。今、刑務所の知的障がい者の約7割が再入者と言われています。これらの者に対してもそれに対応した処遇をしていかなければいけないと思っています。私は、知的障がいのある再入者に話を聞くと、刑務所を出て家に帰ると、両親が、「刑務所生活が大変だったのだから、ゆっくりしなさい」と言って、両親は働きに出ていくわけです。障がい者が家に一人残って、何もすることがなく、お金もないものですから、コンビニに行って万引きをするなど再び罪を犯すということです。

 知的障がい者も、仕事をさせなければいけないのが一つと、もう一つ、仕事の中で社会性を身につけなければならないということです。これを行っていかないと、再犯は減らないのではないかと思っています。今、この二つが気になるところです。

—— 仕事を行っていた中で一番感激するのはどんなことですか。

手塚 社会で一所懸命働いているのを見るのは感動します。お好み焼き屋に就職した者が、元気よく働いているのを見ると、本当にうれしいなと思い、この仕事をやっていてよかったなということが一瞬でも味わえます。

(2020年06月01日公開) 

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