刑事弁護の情報と知が集まるポータルサイト

『オアシス・インタビュー』第6回 阿部恭子 氏に聞く

加害者家族の悩みを整理し支援する

遅れている支援の法制化


1234

11 なぜ加害者家族支援は遅れているのか

—— 犯罪被害者基本法が2004年に制定され、犯罪被害者支援に関しては、法整備がなされました。被害者支援も遅れていましたが、加害者家族支援については法整備はまだなされていません。なぜ加害者家族支援は遅れているのでしょうか。

阿部 犯罪被害者については、当事者たちが声を上げ、ムーブメントを起こしてきた歴史があると思います。一方、加害者家族に対する社会的制裁が凄まじい日本において、加害者家族自らが声を上げることは非常に高いハードルがあります。加害者家族は“Forgotten Victim”(忘れられた被害者)と呼ばれることもありますが、当事者が声を上げにくい日本ではさらに問題は後回しになると思います。

12 加害者家族支援の法制化

—— 先ほどいったように被害者支援は法制化されています。実は加害者家族も被害者だと思います。その意味で、もっと法的な枠組みが作れないかと思っていますが、その点はどうですか。

阿部 日本の被害者支援制度では、被害者の範囲が狭いことが問題です。日本は家族間の殺人が多いので、加害者家族であり、かつ被害者でもあるというケースが少なくありません。母親が夫を殺した場合、そういうのは想定外でその家族は給付金の対象にならない。本当は〈犯罪に巻き込まれた人のサポート〉という視点が必要です。その中には、加害者家族もいるし、犯罪を目撃した人もいます。また、マスメディアによって地域で結構ひどい目に巻き込まれている人もいます。そういう人たちは加害者でも被害者でもないですが、被害を被っています。もっと全体的な、その事件から発生した被害、傷ついた人を回復させていく大きな枠組みが作れないかと思います。

—— そうなってほしいですね。

阿部 ノルウェーの犯罪社会学者のニルス・クリスティーは、「理想的な被害者」という論文(斉藤哲訳「理想的な被害者」『東北学院論集 法律学』第63巻〔2004年〕256~274頁)を書いていますが、被害者に完全に落ち度がない人が被害者として認められているイメージです。しかし、実際は被害者の全部が「理想的な被害者」ということはありません。被害者に不貞行為があったり借金していたり、結構ひどいことをしていたこともあります。もちろん、だからといって殺されていいわけではありませんが、そういう後ろめたいことがある人は被害者とは名乗り出られないようなことがあります。

 被害者の加害性も加味して、それも許して、犯罪が起きたあとの傷をみんなで回復していこうとすれば、被害者は理想化されないし、そこに苦しまなくて済むと思います。現在の被害者支援の対象者は、「全く何もしないのに勝手に襲われました」みたいな人だけです。本当に弱い被害者だけを対象にすると、その他の被害者は全然救われてないと思います。被害者の枠組みをもっと広くするべきです。

13 今後、力を入れたいところ

—— 最後に、今後、特に力を入れたいことはありますか。

阿部 最近少しずつ始めていますが、加害者家族の子どもたちの経済的な支援です。親が逮捕されると当然収入が減りますので、子どもは進学先を変えなければいけないとか、進学できなくなってしまうことがあります。
 大学の学費は奨学金の対象になっても、入学金は多分駄目です。入学金はどこかから用意しなければならないし、受験料なども結構かかります。そういう経済的支援を始めています。
 加害者家族の子どもたちには、教育の機会を極力増やすべきだからです。親が犯罪を犯した子どもたちを見ていると、親にこだわるというか、犯罪を犯した親を美化する傾向もあって、美化する人に限って、親以外のモデルがない。もっといろんな人と触れ合って、いろんな人を見ていったら、もっと家族というものを相対化して、自分のアイデンティティーを考えるきっかけになるからです。加害者家族の子どもたちが社会から差別されて教育の機会も少ないとなると、精神的にも物理的にも孤立しがちな環境になると思います。

 大学に進学したり留学を経験したり、できるだけ多くの人と接して、いろいろな知識を吸収している人たちのほうが、加害者家族に捉われない生き方ができています。だから、国の制度で、入学金を含めて学費とか奨学金をもっと充実させてほしい。そこまでいかないなら、当面、私たちがそのサポートを続けたいと思っています。

—— 長い間、どうもありがとうございました

(2020年10月27日公開) 

1234
用語解説

こちらの記事もおすすめ