困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで<br>第16回

困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで
第16回

警察と民間鑑定の違いとは!?

齋藤健吾 株式会社齋藤鑑識証明研究所代表


 こんにちは! 株式会社齋藤鑑識証明研究所代表の齋藤健吾です。

 さて、今回のテーマは「警察と民間鑑定の違い」です。警察と民間は、どちらも「事実を科学的に明らかにする」という点では共通していますが、その目的・取扱事案などは大きく異なります。

 本稿では、長年民間鑑定に携わってきた立場から、警察と民間の違い、そして両者が果たしている役割について紹介します。

1 活動目的の違い

 そもそも、警察と民間では活動の目的が異なります。

 警察は、公共の治安維持を目的に活動するため、社会秩序を乱す犯罪者を特定・検挙することが最優先になります。そのため、被害者の心情への配慮や個別の救済は、警察業務において優先順位が下がります。

 一方、民間鑑定の目的は、依頼人のトラブル解決です。依頼人から詳細な事情を聴き取り、何を証明したいのか、どのような感情(不安・怒り・恐怖など)を抱えているのかを理解した上で鑑定を行います。つまり、社会全体の治安維持よりも、個別の問題解決に重きを置いています。

 私自身、長年民間鑑定に携わる中で痛感しているのは、依頼人のトラブルを解決することと依頼人が望む鑑定結果を出すことが必ずしも一致しない、という点です。

 依頼人の多くは、鑑定を依頼する時点で「こういう結果が出てほしい」という期待を抱いています。しかし、実際に鑑定を行った結果、その期待とは異なる結論に至ることも少なくありません。その際、依頼人が納得できず、不満や再鑑定の希望を申し出ることもありますが、結論を改変することはありません。鑑定倫理に反してしまうからです……

(2025年11月27日公開)


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