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第9回

同性婚訴訟とまさひろさん・こうすけさんのストーリー

アイキャッチ

この時代を生きる私たちすべての問題として、声をあげる

取材・文/原口侑子(Yuko Haraguchi)

撮影/古平和弘(Kazuhiro Kodaira)
編集/杜多真衣(Mai Toda)


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 同性同士の婚姻を求める「同性婚訴訟」は、国を相手にして2019年2月14日、全国で一斉に提起された。筆者が同性婚訴訟を初めて取材したのは、1年前の2018年末だった。取材にあたって極度に緊張していた。

 原告カップルの方々は、自らのとてもパーソナルなストーリーを丁寧に話してくれた。性的指向を自覚したときのことや葛藤、ふたりのカップルとしての暮らし、求める未来と声をあげることについて。

 カップルの日常を聞きながら、「男女のカップルと同性のカップルと、何が違うんだろうな」と考えた。何も違わない、が答えだった。違うのは今の社会における受容のしかただけだ、だから社会の中で「あたりまえになるのがいい」とそのときは思った。

 「ふたりが一緒に過ごすことが、ふたりのあいだだけでなく、社会の中でもあたりまえになるのがいい」と。その気持ち自体は今でも変わらない。

色違いのコンバースからも仲の良さが伝わってくる

同性婚をめぐる動き

 2月の提訴の後、LGBTQ関連のニュースが増える中で、裁判は淡々と進んでいた。そのあいだに、台湾で同性婚を認める法律が成立した。

 国内の同性婚のクラウドファンディングには1000万円を超える支援が集まり、11月には国会に対して同性婚の実現を求める「院内集会(マリフォー国会)」が衆議院で開催されて政治的な動きも加速している。

 院内集会に先がけた9月、当初の原告団に加えて、福岡に住む原告二人が九州初の訴訟を起こした。

 今回は、そのふたりのストーリーだ。

 「まっすぐで自然体で、仲良しのカップル」というのが最初のふたりの印象だった。撮影時、公園のベンチに腰かけたふたりは、おそろいのコンバースのシューズで和やかにしゃべっていた。薬指にきらりと指輪が光る。

 にこにことほがらかに話すのが赤いコンバースのまさひろさん(32)で、落ち着いた口調で穏やかに話すのが紺のコンバースのこうすけさん(30)。

 この日ふたりは衆議院の「院内集会」のために上京していたのだった。

談笑する、まさひろさん(左)とこうすけさん(右)

オープンにしていったまさひろさん、クローゼットだったこうすけさん

 「小学校高学年くらいから、男性の方に目がいくというのはあった」と話を始めたのはまさひろさんだった。

 「だから、自分は男性が好きなのかなという気持ちはあったけれど、当時はネットもなかったし、誰も教えてくれなかった」

 「高校生になるころ携帯で見て、ああ、そういうのもあるんだ、と思った。それから少しずつ自分を受け入れていきました。まわりにはすぐには話せなかったけれど、大学生になってから携帯を通じてコミュニティが広がって、一部の親しい友人には少しずつ話すようになりました。職場では言っていなかったですが、母には24歳の時に話しました」

 それに対してこうすけさんは、「私はずっとクローゼットでした」という。「クローゼット」とは、自身の性的指向やセクシュアリティを公表していない人のことだ。

 「小学校低学年のころから男の子のほうがかっこいいなと思っていた。でも、ふと『かっこいいね』と言ったときに、『え、オカマなの?』とまわりにからかわれた。そのとき本能的に『これは言ったらだめなんだな』と思って、それ以来、ずっと仮面をかぶるようになりました」

 「思春期にも、運動部で冗談で『ホモなの?』なんて言われても即リアクションができるように、いつも臨戦態勢で準備していた。興味のない女性タレントをかわいいと言ってみたりもした。それでも好きになるのは男性だった」

 「8年間付き合った男性がいたのですが、彼もクローゼットで、8年のあいだずっとまわりに関係を偽って過ごしていました。そんな閉鎖的な関係だったので、二人の関係にうまくいかないことがあっても誰にも相談できず、結局別れてしまいました。カミングアウトできたのは母だけでした」

 そんなこうすけさんは、まさひろさんに出会って変わっていく。

ふたりが出会ったときのこと

 ふたりが出会ったのは2017年のこと。まさひろさんが手伝っていたお店で、共通の友人から、こうすけさんを紹介された。

 出会った当初は、「相談相手になれる同じ性的指向の友人」だったふたりだが、「相談するうちに、この人と合うんじゃないかと思って」、付き合うようになった。

 こうすけさんは、「まさひろさんと付き合い始めて衝撃だったのは、友人に自分のことを『彼氏』と紹介されたこと」という。「自分は今までずっとクローゼットで、付き合った人もクローゼットで、そんな風に紹介されたことがなかった。すごく嬉しかったけど、びっくりしました」

 「そんな私に、まさひろさんの友人は普通に接してくれた。共通の友人もできてきて、隠さなくていいんだと思えるようになった。それから、ごく親しい人には少しずつ自分の性的指向をまわりに打ち明けるようになりました」

 付き合い始めてすぐのお盆には、まさひろさんの実家に行った。「まさひろさんの親戚一同10人以上が集まっていて紹介されました。緊張したー……」と笑って教えてくれる。

 「今までの人生で一番幸せだと思っていました」

 ふたりは2018年6月に福岡市のパートナーシップ宣誓をする。

(2021年07月02日) CALL4より転載

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