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『オアシス・インタビュー』第7回 川口創 氏に聞く

DNA型データ採取・保管は憲法違反だ

DNA型データ等の抹消等請求事件


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川口創弁護士(2020年10月23日、名古屋市内の名古屋第一法律事務所にて)。

1 DNA型データ等の抹消訴訟の経緯

—— 2019年6月、名古屋市内に住む女性(保育士)が、愛知県警の警察官によって採取された自己のDNA型データ等の抹消と、データ等の保管が情報自己決定権を侵害し、精神的苦痛を受けたとして、国に対して損害賠償を求めて、名古屋地裁に訴訟をおこされました。川口さんはその女性の代理人をしていますが、はじめにその訴訟にいたった経緯をお聞きかせください。

川口 事件自体は2014(平成26)年ですから結構前のことです。訴えをおこした女性はボランティアでイヌやネコが殺処分されないよう、里親募集の活動をしていました。
 その年の5月に「きくちゃん」と名付けられた犬が新しい里親に引き渡される際に、逃げてしまいました。そこで、ほかの協力者2名と合計3人で、名古屋市の瑞穂区や隣接の南区を中心に犬を探すためのチラシを電柱に貼りました。しかし、なかなか見つからなかったので、6月16日から18日にかけて天白区内の電柱にもチラシ9枚を貼りました。
 そうしたら、7月初旬に天白警察から電話があって、屋外広告物条例違反のことで警察への出頭を高圧的な態度で求められました。

—— 屋外広告物条例違反ですか。

川口 本人は、「何で呼ばれたか、さっぱり分からない」という感じでした。瑞穂区や南区の交番にも相談に行き、チラシを貼っているときも、交番の警察官からは、「イヌ、見つかるといいね」と声をかけられていたし、本人としては「何でだ」という感じでした。警察に行ったら、担当警察官から「屋外広告物条例違反です」と言われた。このとき、この女性のほか、イヌの里親ともう1人の協力者の女性と合計女性3人が呼ばれていました。

 3人で一緒に警察に行きましたが、この日は、この女性だけを取調べるということで、2人は帰らされました。この女性だけが朝の10時から15時まで取調べを受けた。午前中はチラシを貼った9カ所をまわり、被疑者として指差し確認をさせられながら、各箇所5枚、合計45枚の写真を撮られました。衆人監視の中で、指差し確認や写真撮影をされたこと自体、これまで警察にお世話になったことなど一度もない彼女にとって耐え難い苦痛や恐怖を感じました。午後は、なぜチラシを貼ったかの経緯をいろいろ聞かれました。これが7月10日です。

 8月19日にも再度出頭させられて、10時から15時ころまで取調べを受けました。そのときは、身上経歴を詳しく聞かれた後、おもむろに、「今から写真撮ったり、DNAとか、そういうのがありますから」と言われて、鑑識の部屋に連れていかれた。鑑識の部屋に入るやいなや、任意だから断ることもできるという説明も一切なく、「はい、写真を撮りますね。ここに立ってください」「次は指紋とりますね」「次はDNAとります」と、ベルトコンベヤー式に写真、指紋、DNAが採取されました。口腔の粘膜を綿棒でぬぐってDNAが採取される際は、「DNAを採取しておくと、天災のときに、身分判明につながりますから」と言われ、採取に関する説明は一切なく、拒める説明もなく、採られてしまいました。

 この件は不起訴になったのですが、ずっと被疑者として顔写真が残ることや指紋、DNA型データが警察に保管され続けることに耐え難い苦痛を覚えた彼女は11月ごろに天白警察へ電話して、データの削除を求めたけれども、データが削除されたか否かについてさえ、警察から具体的な返答なかった。

 そこで、私のところに相談に来ました。採られたときから3年たってしまっているから、時効の関係で、「採られたこと自体の違法性を問うのは難しいな」と思いましたが、「データを保管していること自体が憲法違反だ」という訴えはできるということで、削除を求める裁判をすることになって、2019年6月13日に提訴に至りました。

原告の女性が呼び出された天白警察署(名古屋市天白区)。

—— データ保管は、その警察署でしているのでしょうか。

川口 データ保管は警察庁です。その意味で国が相手になります。裁判自体は、国がDNAデータベースを持っているので、「国のデータベースを削除せよ」という裁判を起こしました。

(2021年03月05日公開) 

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