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連載 裁判所書記官が見た刑事弁護

裁判所書記官が見た刑事法廷 第7回

勾留理由開示

中村圭一 元裁判所書記官

 「勾留理由開示」について、利用された方はなかなかいないのではないかと思います。実際に、勾留理由開示の請求件数は、2021年では全国で465件と非常に少ない数字です(2021年「司法統計年報」第17表)。実は、私も、勾留理由開示の手続を書記官として担当したことはありません。書記官になるための研修を受けているときに、何度か勉強のために見せて頂いた程度です。そのくらいレアな手続です。しかし、最近は、その重要性について弁護人にも理解されてきているようです。

 勾留理由開示は、憲法34条の「要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない」という条文を受け、刑事訴訟法82条に規定された制度です。同法84条1項で、裁判官が勾留の理由を告げることになっていますが、特に勾留した理由について詳しく述べるわけではなく、同法60条1項1号ないし3号のいずれに当たるのかを告げて終わる程度です。

 また、弁護人が口頭で意見陳述をすることもありますが、刑事訴訟規則85条の3によりその意見陳述は10分以内に制限されている上に、裁判官がその意見陳述に対して応答するような義務もありません。したがって、後述するように、制度がうまく利用されないと、正直なところ、単なる「セレモニー」であるような印象は否めません。

 では、勾留理由開示には、どのような意味があるかと言えば、直接的な実効性はほとんどなく、第一には憲法上の直接的な要請だからというのが本音なのかもしれません。

 ただ、強いて挙げれば、納得の行かないような勾留がなされた場合には、勾留理由開示請求を適切に行うことで、裁判官による勾留の判断をより慎重ならしめるという意味はあるかもしれません。特に、小規模庁では、勾留理由開示がなされることは少なく、裁判官や職員も手続に慣れていないため、内心かなり嫌がっていることには違いありません。そのような小規模庁で勾留理由開示が何度もなされれば、勾留担当の裁判官は、勾留の判断について慎重にならざるをえないでしょう。

 そのほかに、次のようなメリットがあります。接見禁止がついているときは、家族が被疑者と面会できませんが、勾留理由開示公判の際に、傍聴席からですが、家族が被疑者と「面会」できる機会になります。また、勾留理由開示での弁護人の意見陳述はその後の勾留取消請求や勾留延長請求において考慮されることもあるので、必要に応じて、積極的に利用することをおすすめします。

(2022年10月20日公開) 


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