連載 裁判所書記官が見た刑事弁護

裁判所書記官が見た刑事法廷 第17回

裁判員候補者名簿管理システム

中村圭一 元裁判所書記官


 裁判員の係を担当している際に「裁判員候補者名簿管理システム」という裁判員候補者の情報等を管理するシステムの担当をすることがありました。パンフレットの調達などはまだ内容は理解できますが、裁判所職員はシステムについてはど素人です。それなのに、システムの改修などについて担当しなければいけません。正直、我々が、システムを担当する超大手有名企業の担当者と普通に渡り合えるわけはありませんが、それでも何とか渡り合っているようにしなければならないのです。こちらがわからないうちに、大手企業の都合がいいようなシステム設計にされているようなことはおそらくたくさんあると思います。私が係長をしていたときには、超優秀な係員が2名いたので何とか乗り切れることができたんだと思います。それぐらい主担当ではない私にはあまりよくわからない状態でした。

 また、システムの管理上数値等の異常が生じた場合は、容赦なく登録した携帯のメールに異常を知らせる通知が送られてきます。深夜に何度もメールが送られてくるのも稀ではありません。内容によっては朝イチで対応するために早朝出勤しなければいけないこともあります。このシステムが稼働しなくなったら、全国の裁判所で裁判員裁判を実施できなくなるくらいの影響があるので、非常に大きな責任が伴います。一度、全国的に数時間だけシステムを使用できなくなる事態が起きた際も、全国の裁判所から多くのクレームが寄せられました。

 このように、裁判所だけでもかなり多くのシステムを抱えています。コンピュータ等に詳しいわけでもないのに、最高裁判所への勤務になったばかりにシステムを担当している職員等は本当に冷や冷やものの生活を送っていることはあまり知られていない……

(2023年09月19日公開)


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