⑵ 社会復帰後における支援
ア 保護観察所への同行
更生緊急保護が採られた場合や保護観察付執行猶予となった場合、少年事件の保護観察処分となった場合に、保護観察所への同行を行うことがある。対象者の気持ちに寄り添いながら、保護観察所職員の説明では分かりにくい点を補充したり、保護観察所職員が把握したい事件の内容をよりそい弁護士から説明したりなど補助的な役割を果たすこととなる。
更生緊急保護を行うために面談が実施されるが、対象者が保護観察所職員の言動から想定外の事態に陥ることもあり得る。実際に筆者は帰住調整の準備に時間が掛かり、銀行に行くと言って離席した対象者が戻ってこず、更生緊急保護(帰住支援)の実施に至れなかったことを経験した。
イ 医療機関への同行
高齢者や障害を抱えている者など、医療機関へ通院を必要とする対象者であれば、診察に同席することもある。よりそい弁護士も病状を把握することで、就労支援や介護サービスなど対象者に必要な支援に気付くきっかけにもなる。
ウ 就労支援
経済的な安定を図るため、ハローワークへの同行や、就労継続支援への同行などを行うこともある。対象者の就労意欲を尊重し、進める必要がある。
エ 面談
事務所で面談を行うこともあるが、筆者はできる限り対象者の生活場所まで足を運ぶことが多い。日常の様子を見ることで、環境調整の状況を認識できることもある。働いている姿を見てほしいと申し出た対象者もおり、対象者の更生に向けた意欲を感じる場面も多い。
⑶ 刑事事件との関係
よりそい弁護士制度は、事件後の社会復帰や再犯防止に向けた支援を前提としているが、終局処分として考慮される事情や、一般情状として対象者に有利な事情として考慮されることがある。
詳細については田原論文を確認されたいが、単によりそい弁護士制度を利用するだけでは足りないものの、事件後の具体的な活動内容を示すことが必要となる。もっとも、事件後に弁護人がよりそい弁護士として活動することを義務付けることは、弁護人に過度な負担を課すものとなり、不適切であると考える。事件後も対象者と関わろうとする考えがある弁護人だけが採り得る方針であることを忘れてはならないといえる。
⑷ 適切な活動について
これまで具体的な活動内容について触れたが、対象者が抱える問題や事情はそれぞれ異なるため、この活動を行わなければならないというものはなく、担当弁護士の判断に委ねられている。柔軟な対応が可能であるからこそ、広範囲の支援があり得るのであり、よりそい弁護士のやりがいといえる。
4. よりそい弁護士制度の課題
よりそい弁護士制度が発足されていない地域の刑事施設にもよりそい弁護士として訪問することがある。馴染みがないため、刑事施設側は警戒を見せるときもあるが、比較的に好意的な感想を述べることが多いように感じる。
刑事施設側も受刑者の社会復帰や再犯防止を願っており、立場は違えど、目指すものは同じかもしれないが、どのように対象者と歩んでいくのか、対象者の意思をどこまで尊重するべきかはやはり立場として違いを見せる。
刑事施設や福祉関係者との連携も大切である一方、対象者の意思を尊重するという寄り添う立場を第一とするのがよりそい弁護士であると感じている。
しかし、他県の刑事施設や福祉関係者、対象者との繋がりを維持するには、他の業務との兼ね合いからよりそい弁護士の活動にも限界がある(課題①)。
また、各地域のよりそい弁護士制度の対象となる方だけがその支援を受けられるという現状も課題といえる(課題②)。この点、よりそい弁護士制度の全国的な普及が実現すれば、課題②は解消される。そして、もし制度が全国的に普及し、他地域の弁護士間で情報共有が可能となり、対象者の地域の弁護士が活動することとなれば、課題①も解消し得るといえる。
5. おわりに
愛知県弁護士会ではよりそい弁護士制度が活発に利用されているものの、全国的な普及にはまだ及ばない。筆者の知識不足や、紙幅の関係で言及できなかった事柄も多くあるが、本稿がよりそい弁護士制度の発展の一助となれば幸いである。
(2026年03月18日公開)
