困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで<br>第21回

困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで
第21回

実例ケーススタディ/石巻・強制わいせつ致傷事件(その1)

警察指紋鑑定のプロセスと作成書類

齋藤健吾 株式会社齋藤鑑識証明研究所代表


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4 被疑者特定へ向けた「指し名照会」の実施

 初期捜査で貴重な遺留掌紋が確保されたものの、犯人の特定には至らず、事件は膠着状態に入ります。

 事態が大きく動いたのは、事件発生から2年が経過した2012(平成24)年のことでした。地道な捜査の結果、甲氏という人物(別件で逮捕され、後に起訴猶予となった人物)が被疑者として浮上したのです。

 これを受けて、石巻警察署長から県警本部の鑑識課長に対し、保管されていた遺留掌紋と甲氏のデータを照合するよう、指し名(さしな)照会[1]が依頼されました。

 本連載の第18回から第20回では、指し名照会について触れませんでしたが、警察の捜査活動において被疑者がいる場合には、所轄警察署側が警察本部に対して、その人物の指掌紋と遺留指掌紋との照会を依頼する場合があります。

 本件の甲氏に関しては、2012年2月13日に石巻警察署が別件で作成した指紋票[2]がすでに警察内に保管されていました。

5 掌紋一致の通知と「鑑定書」の作成

 2012年5月28日、指し名照会の結果が警察内部で出されました。遺留掌紋が、甲氏の右手掌紋と完全に合致したのです。

 この結果は、まず警察本部鑑識課長から石巻警察署長へ電話で口頭回答されました。本事件においては、2012年5月28日付にて報告内容を記録する[書類]電話用紙が石巻警察署において作成されています。

 また、この結果に伴い、同日付で警察本部鑑識課長から石巻警察署長宛てに、[書類]指掌紋確認通知書が送付されました(図1:⑬−3警察本部鑑識課長から照合結果の通知を受ける)。

 警察鑑定において、遺留指掌紋に一致する人物がいた場合には、第20回で書いたように、それを証する書類が作成されます。

 ただし、[書類]指掌紋確認通知書は、あくまで実務上の迅速な報告を目的とした簡略な書面であるため、どこがどのように一致しているのかを詳細に図示した作図写真などは添付されていません。

 この掌紋の合致という客観的証拠の出現により、捜査は一気に加速します。

 それまでは単なる「暴行被疑事件」として扱われていた事件が、この時点から、より刑の重い「強制わいせつ致傷被疑事件」へと罪名が切り替えられることになったのです(罪名が切り替えられた理由については不明です)。

 事件が重大化したことを受け、警察はさらに手続を厳格に進めます。

 2012年11月29日、石巻警察署長から警察本部鑑識課長に対して、[書類]鑑定嘱託書が発せられました。

 嘱託された内容は、暴行事件の際に採取された遺留掌紋と、被疑者の右手掌紋の異同識別です。

 この[書類]鑑定嘱託書にしたがって、鑑識課長は掌紋が一致した経過の詳細な作図写真とともに[書類]鑑定書(平成24年12月5日付)を作成し、石巻警察署長へと送付されました。

【次回予告】次回は「実例ケーススタディ/石巻・強制わいせつ致傷事件(その2)」を取り上げます。

注/用語解説 [ + ]

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(2026年07月01日公開)


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