⑷ 逮捕のための捜索と110条および111条の適用
2024年12月3日の尹錫悦による違憲的非常戒厳によって始まり、2025年4月4日の憲法裁判所による大統領弾劾決定、そして2025年6月4日の李在明政府発足に至るまで、韓国社会は政治的葛藤を経験してきた。その過程で、尹錫悦に対する捜査と関連して、新たな刑事法上の問題が数多く争点化している[1]。そのうち、110条および111条と関連して議論を呼んでいるのが、逮捕のための捜索令状の執行にあたっても、これらの条文が適用されるかどうかという問題である。
2024年12月30日、高位公職者犯罪捜査処は、ソウル西部地方法院に逮捕令状および捜索令状を請求した。ソウル西部地方法院は、翌31日、逮捕令状および捜索令状を発付するにあたり、捜索令状に「刑事訴訟法110条と111条の適用は、例外とする。」という文言を記載した。この事実が報道されて知れ渡ると、この文言の記載は越権行為ではないかという批判が寄せられた。他方で、「110条などの適用範囲に関する法解釈は、裁判官の権限に属する」として、これを擁護する意見も示された。
学界も、逮捕のための捜索令状に110条と111条が適用されるかどうかについて、熾烈な議論を交わしてきた。①適用肯定説は、❶これらの規定の本質が「秘密という公益保護」にあることが明白であること、❷捜索・押収の可否を判断するにあたっては、いかなる形であれ、この公益が侵害されるおそれがあるかどうかという基準が核心となるべきこと、❸110条は、111条と異なり、「捜索」を追加で明示的に規定していることなどを根拠として提示している。他方で、②適用否定説は、❶刑事訴訟法上の捜索は対物捜索と対人捜索に区別されるところ、「第1編 総則」は両者を別個のものとして規定しているだけでなく、両者はその性質と目的が異なるため、110条および111条の承諾規定は対人捜索に準用されないこと、❷110条や111条の「秘密」の対象は物や情報に限定されるため、重大な嫌疑を受ける被疑者の所在自体は「軍事上・公務上の秘密」となり得ないことなどを根拠として提示している。110条が対人捜索の場合にも適用されるとすれば、「軍事上秘密を要する場所」に逃げ込んだすべての被疑者は、その責任者が拒否すれば逮捕・勾留を免れることができ、新たな治外法権が生まれると批判するのである[2]。
捜索・押収の制限規定は、根本的には「物」に対する捜索・押収を制限することによって公益を保護しようとするものである。そのため、身体拘束のための捜索とは関連がないと解し得る。110条および111条は、「場所」の秘密維持と「物」の押収を保護することによって——特に、110条は「軍事上秘密を要する場所」自体への捜索を制限することによって、国家の利益を図る規定である。重大な犯罪の嫌疑を受ける被疑者・被告人の存在自体を「軍事上・公務上の秘密」と見なして、捜査機関によるアクセスを根本から遮断するための規定ではない。
尹錫悦に対する捜査と関連して、尹錫悦側は、ソウル西部地方法院の令状発付にあたり、逮捕令状および捜索令状の執行について異議を申し立てていた。これを審理した裁判官は、刑事訴訟法110条は「場所」ではなく「対象」に対する制限規定であって、「被告人や被疑者の発見を目的とする捜索」の場合には適用されないと解して、被疑者の発見を目的とした捜索令状に「刑事訴訟法110条と111条の適用は、例外とする。」と記載した。これは、上記内容を確認する趣旨で記載されたものに過ぎず、妥当なものである。
3 おわりに
朴槿恵国政介入事件や尹錫悦不法戒厳に対して、韓国の市民たちは平和的にデモ活動を展開し、これらを弾劾へと導き、新たな政府を発足させた。このことは、韓国民主主義のダイナミズムと成熟度を示している。刑事訴訟法110条と111条は、21世紀の大韓民国という成熟した民主社会において、19世紀の観念に基づいて捜査機関と行政機関の対立を調整しようとしている。このような規定が、果たして十分な法制度と言えるかどうかについて、深く省みる時期が来ている。110条および111条は、19世紀の政治状況と法哲学に根ざした不完全な規定である。多元化し、民主主義が成熟した今日の韓国社会において、国家権力の単一性を前提とした規定は、法院や捜査機関と行政権力の間で生じる対立を解消し、調和した状態へと導く上での限界を示している。捜索・押収の例外規定である110条および111条を厳格に解釈する立場を堅持しつつ、同時にこれらの規定に内在する問題点を法改正によって解決していく努力が必要である。
まず、捜索・押収に対する承諾拒否の主体は、当該公務員の所属する行政府の長官であると明示される必要がある。また、承諾拒否があった場合は、その承諾拒否の適法性を司法府が判断できるような非公開審理手続が導入される必要がある。これらの内容が、改正にあたっての基本方針となるべきであろう。
注/用語解説 [ + ]
(2026年08月21日公開)
