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『オアシス・インタビュー』第4回

【前編】地域との共生を目指す官民協働運営の刑務所

美祢社会復帰促進センターの取組み


3 美祢社会復帰促進センターの取組み

—— 次に、平成20年から美祢(みね)社会復帰促進センター長になっていますが、センターについてお聞きします。このセンターは、日本で、PFI方式で作られた初めての刑事施設ですね。そのPFI方式はどんなものかを教えていただけますか。

手塚 PFI方式はプライベート・ファイナンス・イニシアティブの略で、公共施設の建物の維持管理やその運営等を、民間の資金とノウハウを用いて行う方法です。効率的、かつ、効果的な公共サービスの提供を目標としているものです。

—— 刑務所まで民間が入ることにちょっと違和感を感じますが、その点では、どういうふうにお考えですか。

手塚 当時、行財政改革があり、その中で、官製市場への民間参入が議論されました。その一つに、刑務所の運営が採り上げられたのです。私どもも同じような考えで、公権力の行使を伴う所で、民間の参入はないだろうと思っていました。当時、上から「業務を分けて、民間にできることは民間にさせたらどうか」と言われて、検討したわけです。

 それと、もう一つは、刑務所側には過剰収容が非常に進んでいて、職員が全く足りなかったという事情がありました。それで、行刑改革ということで、業務全般を見直している最中にこの話がありました。職員の業務負担を軽減させなければいけないことが喫緊の課題で、その中でも健全な刑務所運営をしなければいけないということで、PFI方式をとるという結論を出したのです。

—— 「受刑者の処遇に民間が入ることで、その質が落ちる」とか、「収容者の定員がむしろ経済効率からいくと減ってしまうのではないか」という批判もありましたね。

手塚 処遇の質が落ちることに関しては、民間の教育機関のシステムのほうがずっと進んでいて、それに比較すると刑務所のノウハウは時代遅れになっていました。ですから、反対に、われわれとしては、民間を入れたほうが幅広い処遇ができるのではないかと考えていました。

 ただ、警備など受刑者と直に接する権力行使の面は、刑務官がする必要があるし、そうすれば刑務官本来の仕事である受刑者の心情の把握に労力を使うことができる。それ以外の部分については民間にお願いしたいという考え方で業務を振り分けています。

—— 業務は、具体的にどういうふうに振り分けていますか。

手塚 公権力の行使を伴うもののうち権利性が強く民間委託になじまない業務、例えば、武器・戒具の使用などの実力行使、懲罰などの権利制限、仮出獄の申請・刑務作業の賦課については刑務官が行います。それ以外のものは、法律的な定め(構造改革特別区域法)で規定して、これは民間に任せてもいいではないかという組み立てになっています。例えば、施設の警備、職業訓練、信書検査の補助、領置物の保管、健康診断などです。さらに、総務系の事務、窓口受付、食事の提供、洗濯、清掃など非権力的業務は、契約により委託可能です。こういう考え方です。

 なぜ法律的定めを本来の刑事収容施設法に入れなかったのかというと、本来の法律に入れてしまうと、どこの施設でもできるようになってしまうのです。われわれとしては、試行的で、民間がどこまでできるのかを検証したいということもあったので、美祢しかできない形にしました。

—— これをやってみて、特にこれ以前の仕事との関係では、あまり違和感とか、支障はなかったのですか。

手塚 自分たちでは非常によく切り分けたつもりですが、いろいろと不具合は出てくるものです。一つの業務を見ていくと、例えば、反則行為を民間職員が見ていて、国の職員に知らせるわけです。「あの人は反則行為をしていました」と言ったら、国の職員が行って、「反則行為をしたか?」を調べるわけです。そして、審査会に持っていって、事実認定をして懲罰になるかどうか判断します。これは、民間と国とが本当にきちんと連携していないと、一つの業務として成り立たないことです。

 例えば、民間職員が見ているのに、見て見ぬふりをしたら、もうそれで終わりですから、そういう難しさはあります。ですから、われわれは、民間職員にいろいろなことを教えました。「こういう反則行為があるんだ」と、全部教えないとできないわけです。実際やってみて、そういう連携が難しいなと思いました。

—— 立場を替えて、受刑者から見ると、民間職員と刑務所の職員をどう見ていますか。

手塚 国の職員の前では反則行為をしませんけど、民間職員の前では、いろんな反則行為をする者がやっぱりいました。ただ、それは、民間職員に、「あなたたちが見て、きちんと報告しないから受刑者もそう思うので、報告すれば、間違いなく、あの先生がいても駄目なんだなと思う」と言いました。ですから、連携が一番です。最初の頃はぎくしゃくしましたけど、今はそんなことはありません。スムーズに連絡調整をしていて、その面では、うまくいっているのではないかと思っています。

—— 民間職員と刑務官とは、制服などで一見して区別ができるようになっているのでしょうか。

手塚 両方とも濃紺の制服ですが、デザインが全く違うので、一見して区別ができると思います。

—— そうすると、いろんな会社が入ってくるわけですか。

手塚 そうです。給食配膳、総務系とみんな違います。コンソーシアムを組んで、それで入札に応札するということです。

—— では、一社ではないのですね。

手塚 それぞれの専門分野の方ばかりです。その業界では、「エキスパート」と言われる人たちが組んで入札をしてきます。当然、窓口はありますので、これを「SPC(特別目的会社)」と呼んでいますけど、そこが中心になって会社を集めて、コンソーシアムを組む形になっています。ですから、管理会社は決まっていて、そこには統括業務責任者がいて、そこを窓口として各業務責任者に意思伝達する形になっています。

—— この方式の施設は日本では、美祢のほかに島根あさひと播磨、喜連川の4つです。いずれも犯罪傾向が進んでいない人が入る施設ですね 。

手塚 そうです。

—— 犯罪傾向が進んでないとか、進んでいるとかは、どんなふうに区別がありますか。

手塚 拘置所や拘置支所で刑が確定しますと、そこで分類調査を行います。犯罪歴、育成歴、犯罪内容などを、専門の心理学者がいますので、そこで面接等を行って判断することになります。刑務所に初めて入っても、暴力団関係者なら、犯罪傾向が進んでいるということで、府中刑務所などに収容します。簡単に言うと、犯罪傾向が進んでいない者とは初犯の者が対象で、累犯があると犯罪傾向が進んでいることになります。

—— 最後に所長になった府中刑務所は。「犯罪傾向が進んでいる」受刑者が収容されていたのですね。

(2020年05月27日公開) 

用語解説

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