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『オアシス・インタビュー』第6回 阿部恭子 氏に聞く

加害者家族の悩みを整理し支援する

遅れている支援の法制化


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4 加害者家族支援のきっかけ

—— そういう大変な仕事をされていますが、そもそもどういうきっかけで加害者支援の道に入ったのですか。

阿部 東北大学法学研究科にいた2008年ころ、マイノリティーの人権に関わる活動をしたいと思っていました。既存の人権団体についての私の中の勝手なイメージですが、アドボカシー系で、政策提言が主眼であるようなイメージがあります。マイノリティーの中では自殺する人が結構多かったんです。セクシャルマイノリティーも自殺率が高いし、私の知り合いで在日の人も自殺していました。加害者家族ももちろん自殺したりしていて、ケアの部分が大事ではないかと思いました。社会を変えるという以前に当事者がケアされなければいけないのではないかと思いながら、マイノリティーとの関わりを続けてきました。

 ちょうど2009年から裁判員裁判が始まっています。裁判員裁判を研究テーマとしたこともあって、その中での被害者支援に関心がいきました。
 しかし、現状では刑事手続の中での被害者の枠組みが一応できていましたが、加害者家族はどういう枠組みになっているのだろうと考えたときに、加害者の家族は被疑者・被告人・受刑者ではありませんから、支援する枠組みが全くないし、被害者という概念に入っているかというと入っていません。調べていくと、理論的にそういう話をしている人もいないし、支援している人、こういうことが問題だと言っている人もいない。そもそも情報がほとんどありません。自分がそういう立場になったらどうすればいいんだろうと疑問に思ったのが、加害者家族支援のきっかけです。

—— マイノリティに関心があったとおしゃっていましたが、そうした人権問題に関心を持ったきっかけはどんなことでしょうか。

阿部 それは、中学校のときに好きだった人が在日韓国人2世でしたが、その人から「マイノリティー」という言葉をはじめて知りました。その人はいろんなチャリティー活動をしていて、そこで私もそういう活動がいいな、面白そうだと思い始めました。その人に言われたのが、いろいろな既存の活動は十分ではないということです。「絶対に支援の網からこぼれている人がいて、そういう人を見つけてそこをやりなさい」とずっと言われていました。
 私は、そのときにぴんときていたわけではありませんが、そこからマイノリティーとの関わりが始まっていきました。そのときに、別に具体的な計画が自分の中にあったわけではなくて、ただそういう方向に行きたいという気持ちは割と小さい頃から持ち続けていて、加害者家族と出会ったときに、「これだ、どんぴしゃだ」と思いました。

—— 天から与えられた仕事という感じですか。

阿部 ほんとにそうですね。

阿部恭子さん著の加害者家族に関する5冊の本。

5 ワールド・オープン・ハートの資金集め

—— ワールド・オープン・ハートを2008年に設立されていますが、NPOの活動はどこでも運営資金が大変だと思います。

阿部 設立するときも、仙台だとNPOを支援するNPOが相談に乗ってくれて、運営資金をどうやって集めるかを相談しました。そこの理事長は、「先駆的だし、助成金とか研究費とか割と付きやすい、それは大丈夫ではないか」みたいなことを言われて、そこからはじめました。
 地元のファンドである地域支援金をもらうところから始まり、今ではファイザー製薬、赤い羽根福祉基金、トヨタ財団などから支援していただいています。今はそうした助成金の割合がかなり高くなっています。

—— それでも運営はたいへんですね。

阿部 支援量が多くなると活動費も多くなります。ワールド・オープン・ハートの財源として、一つは情報提供が大きいと思っています。ほかにはないことをしているので、きちんと情報を出してその対価として活動資金が入るようにしていきたいと思います。そのために、マスメディアの取材には積極的に応えるようにしています。

6 加害者支援を必要としている人のアクセス

—— 先ほど相談は電話で来ると言っていましたから、加害者支援を必要としている人のアクセスにはあまり障害があるような気はしないんですが、そんなふうに考えていいですか。あるいは、まだまだこれでは十分支援が行き届いてないと感じていますか。

阿部 最近も、インターネットで検索して連絡をくれる人が多いですけど、ネット情報はガセも多いので、信用性としては半信半疑でかけてくる人が多いと思います。被害者支援だと法的な枠組みがちゃんとあるし、警察とかが窓口になります。もう少し加害者支援が世の中に認知されていったらいいと思います。

—— 先ほどの本の中で熊本大学の岡田行雄さんが少し触れていますが、アクセス障害を解消するためには、一番最初に加害者に接する弁護士、少年事件だったら付添人にもっと団体の認知度を高めていったほうがいいと言っていますが、それについてどんなふうに考えますか。

阿部 まさにそうだと思います。全弁護士に私たちの活動を知ってほしいのですが、誤解も多くて、加害者支援と間違えるんです。「本人の就労支援とかないですか」みたいな話があって、それはやらないことはないけど、ちょっと違います。加害者の支援と加害者家族の支援は違うんだということを知ってほしいと思います。

7 海外との比較

阿部 最近、海外の事例などを見ていると、加害者家族の支援に弁護士が全然絡んでいません。

—— それはなぜですか。

阿部 外国では、担い手がソーシャルワーカーとかで、弁護士があまりそういう視点を持っていないからかもしれません。少年事件の場合の法的責任を負う話が海外の事例からは出てこないです。われわれですと、弁護士は家族の代理人です。少年が事件を起こした、少年が人を殺した、親として法的責任を訴えられている。そこで代理人を紹介して、民事も一緒にやっていくこともあります。また、刑事事件では国選だったけど難しい事件なので私選に代えたいとか、鑑定人の紹介など裁判への協力も入ります。海外だと、加害者家族支援でそういうアプローチをしている所はありません。

 海外だと、ほとんどの加害者家族支援は受刑者の家族がメインです。未決はあまり入ってきません。長期受刑者が多い国、アメリカだと、基本的に10年以上家族同士が会わないと、家族関係は破綻します。破綻しないように面会を促進して、面会室も子どもが来られるように、刑務所に家族が行くスティグマをなくす、ハードルを下げるような環境づくりとか、面会費の立て替えをして外部交通を促進させて家族の絆を維持し、帰ってくる所をキープするのが海外では多いようです。

 われわれだと、その前に事件がなぜ起きたかということが大きいです。日本の犯罪報道は「人を殺してみたかった」ということで簡単に終わります。それは警察発表の「供述」です。そこに何があったのかは、鑑定したりしていかないと分かりません。家族だって素人だし、自分の子どもをそんなに悪く見ていません。自分の子どもが人を殺すと思ってはいないので、そこをきちんとかみ砕いていかないと、子の支援につながらない。
 さっきの通り魔殺人は、判決が確定するには裁判員裁判が始まるまで1年余とかかかりますから、世の中も忘れていて、適当な動機づけで終わらせられています。報道はあまり信用できませんから、継続的に家族関係など犯罪の原因を探ることが、家族の支援にとっても大事だと思っています。

(2020年10月27日公開) 

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