リレー連載 刑事弁護の最前線──各地の弁護士会の動き<br>第3回 愛知県弁護士会

リレー連載 刑事弁護の最前線──各地の弁護士会の動き
第3回 愛知県弁護士会

よりそい弁護士制度の実情と課題

石川幸平 弁護士


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1. はじめに

 2019年に愛知県弁護士会では、罪に問われた人の社会復帰、再犯防止のための弁護士の活動を支援する制度としてよりそい弁護士制度が発足し、年々、活用の幅を広げている。そこで、今回、よりそい弁護士制度の実情と課題について触れていきたい。

2. 愛知県弁護士会におけるよりそい制度の概要

 愛知県弁護士会のよりそい弁護士制度の発足は、兵庫県弁護士会に次いで全国2番目となるところ、申込件数は年間120件を超えている。

 よりそい弁護士制度は、発足している各弁護士会によって、対象や活動、報酬などの基準が異なるが、今回は、愛知県弁護士会のよりそい弁護士制度の基本的事項に絞って説明する。

⑴ 対象者と活動内容について

 まず、対象者は、①愛知県内において、(ⅰ)逮捕、勾留、鑑定留置、観護措置、(ii)刑事施設における刑の執行、(iii)少年院における収容手続のいずれかを受けている者又は受けた者、②刑事施設における刑の執行又は少年院における収容手続の終了後に愛知県内に居住し、若しくは就労した者又はその予定がある者とされている。①から分かるように、不起訴処分となった者も支援対象者に含まれている。

 活動内容としては、保護観察所などへの同行(福祉的支援)や、ハローワークなどへの同行(就労支援)などが想定されているものの、活動内容を特定のものに限定していない。

 愛知県弁護士会におけるよりそい弁護士制度の限定は、対象者1名あたり15万円との上限を設けているだけであり、よりそい弁護士による幅広い活動を可能にしている。

⑵ 支援活動の申込みについて

 支援活動の申込みができるのは、①対象者の刑事事件の弁護人又は少年事件の付添人である会員、②過去に対象者の刑事事件の弁護人又は少年事件の付添人であった会員、③対象者のよりそい相談に応じた会員、④対象者を収容中の刑事施設又は少年施設、⑤地方公共団体その他の罪に問われた人の社会復帰又は再犯防止に係る活動をする公私の団体である。

 国選弁護事件であるか否かは問われておらず、対象者に関わった弁護士が申入れを行うことが可能である。また、④⑤のように、弁護士以外からの支援活動の申込みも可能であり、近年は、弁護士以外による申し込みの数も増えている。

⑶ よりそい弁護士の指定

 愛知県弁護士会は、申込みした会員又はよりそい弁護士名簿登載者の中から打診し、その承諾を受けて、担当弁護士を指定する。そのため、よりそい弁護士名簿に登載していない者であっても、弁護士が申込みを行えば担当弁護士として指定されるようにできる。

⑷ 費用額について

 支援活動費は、1回の活動あたり4時間未満は1万円に消費税等を加算した額、4時間以上は2万円に消費税等を加算した額とし、交通費も支払われる。これらの費用が15万円までに達しない限り、よりそい弁護士の活動を継続することができる。

 なお、紙幅の都合上、以上の説明にとどめるが、詳細については、季刊刑事弁護119号の田原裕之弁護士による「よりそい弁護士制度の概要と刑事公判手続での活用」(以下、「田原論文」)を参照されたい。

3. よりそい弁護士の具体的活動内容

⑴ 受刑中の対象者への支援

 受刑中の対象者の支援としては、対象者との面談や、刑事施設との情報共有、社会復帰後の環境調整を行っている。

 面談方法は、①現地に赴く方法と、②矯正管区のTeamsを利用する方法があり、筆者は初回面談を①で実施し、その後は対象者の意向に沿った方法で面談を行っている。

 近年、提供された更生支援計画書を刑事施設でも活用する運用が広まってきているものの、刑事施設が必要とする情報が十分であるとは言えない場合があり、対象者の意向を確認した上で、情報を提供し、充実かつ円滑な社会復帰を目指すことがある。

 対象者の処遇状況を聴取した際、適正な処遇が行われていないようであれば対象者の意向を踏まえた意見を述べることも、よりそい弁護士の活動としてはあり得る一方、社会復帰に向けた刑事施設との連携を行うため、たとえば、対象者が不適法な処遇対応について国賠をしたいと申し出た場合は、利益相反となることから、受任できないと断ざるを得ないであろう。

 また、社会復帰後に関わる支援者(家族、友人、就労先、福祉関係者)と連携を取り、再犯防止のための環境調整を行う。遠方の刑事施設に収容されることとなった場合、支援者が容易に面会などできず、対象者や支援者が社会復帰後の環境調整に意欲を持ちにくくなることもあるため、よりそい弁護士が橋渡し役を担うこととなる。

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(2026年03月18日公開)


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