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第15回

『セックスワーク is ワーク』をめぐる訴訟に至るまで(前編)

アイキャッチ

「性風俗産業は国に差別されてもしょうがない?」

取材・文/原口侑子(Yuko Haraguchi)

撮影/安木崇(Takashi Yasuki)

編集/杜多真衣(Mai Toda)


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 「これは性風俗業界に対する差別で、『スティグマからの解放訴訟』を起こすのだな」

 原告の話を聞くまでは、そんな風に平面で考えていた。この訴訟は性風俗業界に対する「社会的スティグマ」を取り払おうとする訴訟なのだと。

 スティグマとは特定の属性の個人・集団に対して付される差別や偏見の「烙印」のことだ。

 「性風俗関連特殊営業」が、COVID-19の下での「持続化給付金」及び「家賃支援給付金」の対象から外された。

 「COVID-19の影響を受けた中小企業等・個人事業者の事業継続を支える」という目的で給付が始まったはずの最大200万円の持続化のための支援も、家賃の支援も、「性風俗関連特殊営業」を行う中小企業は受けられなかった。

 その理由を、参議院の答弁で国は「これまで公的な金融支援及び国の補助制度の対象外としてきたから」と答え、中小企業庁も「これまで給付金の対象から外してきたこととの整合性」と言った。つまりは「前例を踏襲」ということだった。

 派遣型のファッションヘルスを経営する原告は、給付を受けられなかったこと(とその根拠である規程)が、憲法14条1項の「法の下の平等」に違反するとして、国を訴える。これは「職業選択の自由」(憲法22条1項)に深くかかわる問題でもある。

訴訟に向けた弁護団会議には、原告及び弁護団、支援団体が参加

経営者としてキャストや従業員を支える日々

 性風俗産業(性風俗関連特殊営業)には幅広い業種がある。

 中でも業界の多数を占めるのが、性交(「本番行為」)を伴わないファッションヘルスだ。無店舗型(派遣型)のいわゆる「デリバリーヘルス(デリヘル)」が最も多く、届出営業所数で見ると、店舗型のヘルスが780件に対し派遣型のヘルスは2万件以上ある(2017年)。

 原告の事業も、無店舗型ファッションヘルスとして風営法上の届出をしている。性的サービスを提供する「キャスト」が事務所で待機し、予約が入ったら出かけるという一般的なデリヘルだ。業界では小規模なデリヘルだという。

 「私がデリヘルの経営を始めて、しばらく経ちます」

 訴訟に向けた弁護団会議に同席した。原告のほかに支援者も出席していた。原告は、丁寧に話し、丁寧に聞く人だった。

 「私自身、もともとデリヘルで風俗嬢のキャストとして働いていました」

 「最初に勤めたデリヘルが、キャスト出身の女性が経営するお店でした。同じようにキャスト出身で、女性で、経営を始めたという彼女の影響もあって、私も自分もお店をやろうかなと思うようになりました。しばらくキャストとして働いた後、独立のような形で、自分のデリヘル店を作りました」

 「経営を続ける中でキャストも増えてきた。従業員も雇っている。簡単にやめられないし、キャストのことを考えてもやめたくないと思っています。お店があることでキャストが守られている部分もあると思っているので」

弁護団の亀石倫子弁護士

COVID-19(新型コロナウィルス)がやってきて

 「でも、コロナが来てからは本当に大変で、お店を続けていけるのか不安でした。今でも不安です」

 原告はこの半年の状況を話す。

 「お店は3月から徐々に売り上げが減り出して、4月は休業要請に応えて休業したので、売り上げは8割減まで落ち込みました。5月以降は7割減、6割減と推移し、やっと7月に3割減くらいにまで戻したところです」

 「お客さんも来ないし、お店で働くキャストも来られなくなった。昼の仕事に移る人もいたし、兼業している人の中にはお休みする人も多かった。出稼ぎで遠方から来ていた人も、遠距離の移動が難しくなった。緊急事態宣言の前後は世間がピリピリしていて、『出勤したら叩かれるのでは』と不安になるキャストもいました」

 キャストたちを束ねて営業する事業者の経営が厳しくなることで、働くキャストの側も厳しい状態になってきていると原告は言う。

 COVID-19関連の助成金の中には、従業員の雇用を維持するための「雇用調整助成金」や、一斉休校の影響を受けた保護者を支援する「小学校休業等対応助成金」もあったが、これらの助成金も、当初は、性風俗業界を「公金を投じるのにふさわしくない」と支援から除外していた。

 ところが要望を受けて4月に運用の見直しがなされ、性風俗業界も助成対象になった。

 「追い詰められていたときだったので、見直しがあってとても助かりました。おかげで従業員に給料を払えたし、お店を閉めなくて済んだ。特に雇用調整助成金には、経営的にも精神的にもかなり救われました」

 とはいえ、経営のためには人件費だけでなく、広告費や家賃、車代、交通費、遠方からの出稼ぎキャストの寮費などがかかる。雇用調整助成金だけではとうてい売り上げ減を埋められない。

 「第一波は何とか、しのいだけれど、第二波、第三波を思うとどうなるか。今後の経営の判断がすごく厳しい。私はできるだけ長く、スタッフやキャストとの契約を切らずに続けたいと思っているけど、感染が出るのも怖い。自分で休業の決断をするのが辛いです」

 「まわりでも何十件と閉店しました。グループ店の支店がなくなったところもあります。やっぱり一番大変なときに、まとまった金額が給付される持続化給付金と家賃の支援が受けられなかったことは大きかった」

 全国で持続化給付金の給付対象外とされたのは、性風俗業界のほか、公共法人、政治団体、宗教団体のみだった。

訴訟に向けた弁護団会議の様子

(2021年10月22日) CALL4より転載

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