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第2回阿部潔弁護士に聞く

刑事弁護は「日々これ研鑽」

被告人の話を素直に、疑問をもって聞く

仙台の仙台中央法律事務所にて。2019年3月12日

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1 東日本大震災を振りかえって

——昨日は東日本大震災があった日でしたが、そのときは、何か被害を受けましたか。

阿部 実際に被災したとき、私は塩釜市という、港町といいますか、やや沿岸に近い所にいました。クライアントが入院している病院に会いに行きまして、挨拶していたら、いきなり大きく揺れて、随分長いなとだけ思っていました。

病院だったので、揺れが収まったらバックアップ電源がついて、停電にはならなかったのです。大したことはないのかと思ったら、病院の職員が来て、「帰ってくれ」と言うので帰ろうとしたのですが、電車は止まっているらしいと言うのです。どうしようか迷っていたところ、その時、同じ病院にいた人たちがワンセグの携帯でテレビを見ていました。それを見せてもらうと、釜石市辺りで車がぷかぷか浮いている映像が目に入ってきました。これでは塩釜もまずいのではないかと思いました。実際に本塩釜駅まで水が来ていたらしいです。雪も降ってきたし、窓から見たら化学工場が燃えているので、「これは帰れない」と思い、その病院で1泊させてもらいました。病院だったので、備蓄の食料を分けていただいたり、追い出されるかと思ったら「ベッドに寝てください」と言われたので、非常にありがたかったです。

翌日、歩いて戻ろうとしました。歩いている道路よりも陸側に船が打ち上げられているような所をびくびくしながら進んだのですが、仙台市に入ってちょっとした辺りでタクシーがつかまったので、事務所に戻れました。

事務所では、書類が散乱して床が見えない状態で、テーブルの上にあったパソコンが床に落ちていたり、ついたての反対側に座っていた弁護士の頭の上にあったはずの書類が、何でかこっちの机の上まで飛んできていたりでした。片付けるのに、1週間から10日ぐらいかかりました。

——特に大きな被災というほどではなかったのですね。

阿部 あくまで沿岸地区の方々の大被害に比べればですが、比較的軽かったと思います。大体、普通の業務に戻ったのは2週間ぐらいたってからです。

——地元の裁判の関係では、特に支障はあったんですか。

阿部 3月いっぱい、仙台地裁管内は、勾留と保全以外、全部ストップだったと思います。ですから、民事、刑事を問わず、全ての期日が取消しになって、しばらくはお休み状態でした。ほかの裁判所の期日については、理解いただける裁判所とそうでない裁判所がありました。例えば、山形地裁はあまり理解がなくて、3月下旬に期日があったんですが、「とても行けない」と言っても、「いや、来てください」と言うのです。「交通機関が全部止まっているのに、歩いて行けというのか」とこちらの事情を話して、やめてもらったことはあります。照井克洋弁護士が「震災と公判手続の更新そして無罪判決」(季刊刑事弁護70号〔2012年〕87頁)で書かれていましたが、裁判員裁判が地震で中止になって、裁判所が裁判員を全員解任。その後あらためて選任した裁判員に、公判手続の更新で、いままでの審理のDVDを何十時間と見せ、評議して判決したという事件がありました。

——刑事施設の関係では、特に大きな被害はなかったんですか。

阿部 沿岸地方の警察署では、浸水など被災したので、比較的軽微な犯罪の被疑者は釈放されたと聞いています。全てではありませんが、一部の被疑者、被告人は仙台に移送されたと記憶しています。

2 仙台中央法律事務所について

——阿部さんが所属している仙台中央法律事務所というと、すぐに思い浮かべるのは松山事件の主任弁護人だった青木正芳先生です。そもそも仙台中央法律事務所は、どなたがつくられたのですか。

阿部 創設されたのは、10期の樋口幸子先生と、12期の斉藤忠昭先生です。樋口先生が松川事件の弁護団をなさっていて、松川事件の判決が出たあとに、地方でも集団事務所は必要だということを力説なされたそうです。樋口先生はずっと東京から来ておられましたが、「じゃあ、自分も来るから」ということで、1961年の10月に創設されました。青木正芳弁護士が入所したのが1962年の4月です。

——現在、仙台中央法律事務所には弁護士は何人いますか。

阿部 昨年、守屋克彦先生が亡くなられまして、現在は9人でやっています。仙台で1番ではないですが、事務所としては大きいほうです。

——事務所自体は、何か事件を共同で受けることがあるのですか。

阿部 あります。松山再審事件の主任が青木弁護士でしたから。かつて、当事務所が松山事件の事務局だったこともあります。弘前再審事件もやっていました。その他、憲法裁判ですが、学テ事件です。比較的刑事事件が多かったようです。現在では、北陵クリニック事件も、うちが事務局事務所です。最近はサボって発行ペースが落ちていますが、ずっと事務所ニュースの「広瀬川—仙台中央法律事務所ニュース」を頻繁に発行していました。その中に事務所で受けた事件の記録があります。

  • 事務所ニュース「広瀬川—仙台中央法律事務所ニュース」の合本をもつ阿部潔弁護士。
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