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第4回 髙橋宗吾弁護士に聞く(4)

先輩から受け継ぎ、若手が変えていく刑事弁護

地域や世代の差を無くし、いろいろな人を巻き込む


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役者と弁護士の類似性

 今年の春に公開された映画「ファーストラヴ」も監修されたのですか。

 はい。もともとは、中村倫也さんがやっている弁護士役のキャラクター取材みたいな感じでした。たまたま先輩から紹介を受けて、堤(幸彦)監督のインタビューを受けました。

 そうしたら、堤監督の会社でプロデューサーをしている女性がたまたま私の大学のクラスメイトで。堤監督とも話が合い、「じゃあ、せっかくだし、監修もしてよ」とお声がけいただきました。

 世間は狭いですね。

 本当にそう思います。この作品は原作も面白いのですが、映画の法廷シーンなどはとてもリアルに作りこまれています。あと、中村さんが背負っているリュックは私と同じものとか、そういう楽しさも味あわせてもらいました。

 小道具まで?

 そうです。「弁護士が何を使ってるか、全部見せて」という堤監督のリクエストで、事務所での私の持ち物などをいろいろと見ていただきました。その中で、「じゃあ、これをそのまま使おう」となったんです。

 あとは、法廷でプレゼンテーションをやるときに中村さんが指輪型のリモコンを使っているのですが、あれも我々がよく使っているものと同じです。

 随分と真似されていますね。

 結構面白かったです。

 じゃあ、キャラクターもだいぶ髙橋先生寄りですか。

 原作があるので、キャラクターは原作に基づいていると思います。ただ、法廷でどのようにプレゼンテーションするのかなど、原作には描かれていないところもあります。実際の法廷の撮影のときはずっと一緒にいて、「こういうときはこうしてます」という演技指導(?)のようなやりとりをさせてもらいました。

 がっつり監修ですね。お話を聞いていると、撮影をずっと見ていなくてはいけないような感じがしますが、結構大変ではありませんでしたか。

 法廷のシーンは2〜3日で撮り終えてしまったので、そのときだけずっと張り付きで見せてもらいました。映画は、同じシーンを何度も何度も撮るのですが、そのたびに役者さんが同じセリフを同じテンションで何回も言っていて、これはすごい……と思いました。僕は、一回法廷でやった弁論を絶対再現できない気がしているので。

 スタッフの人だけでなく、中村さん自身も事前に僕の法廷を見にきてくれてもいたので、すごく弁護士っぽく演じてくれていたのではないかと思います。

 僕が、中村さんに「準備したものを裁判官にどうやって伝えるかを非常に意識する」という話をしたとき、「役者の仕事と法廷での弁護士の仕事は近いところもありますね」と言ってくれました。

 たしかに、所作や服装を気にすることとか、言葉尻まで意識することとか、人に伝える仕事という点で共通点があるなと。たまたまのご縁でしたが、自分としても新しい気づきのある仕事でした。

 俳優と直接会えるのがいいですね。

 そうですね。原作の島本(理生)先生は、打ち上げにも来ていました。私は同席することはありませんでしたが、現場には何回か来ていたようです。撮影に立ち会えたり、俳優さんと話ができたり、原作を書く人の特権だなと思いました。

 撮影現場を見れるのは、原作者の特権かもしれません。ドラマ「イチケイ(のカラス)」のキャストは、私の想像の遥か上をいきましたが……。

 これはイメージと違ったということですね。私は竹野内(豊)さんなど、最高だと思いますが……。

 「えっ!? (入間)みちお?」みたいな。初めて聞いたときの自分の反応は面白かったですね。多分原作を読んでいた人はみんな衝撃だったと思います。

 たしかに、漫画のみちおは竹野内さんのイメージではないかもしれないですが……。僕の中では、竹野内さんは日本で3本の指に入るカッコよさだと思っています。

 あまりにも格好良さが違いますから。

これから刑事弁護を目指す人へのアドバイス

 最後に「これから刑事弁護をやりたい」という学生さんや若い先生が来たら、どうアドバイスしますか。

 私は積極的に自分の経験の話もするし、興味のある人には是非やってみてほしいと思っています。

 弁護士になっている後輩から、事件を受けてくれないかと頼まれることもありますが、できるだけ共同でやるようにしています。私が引き取って一人でやってもいいのですが、せっかくの機会なので「一緒にやろうよ」と言うようにしています。

 「とりあえず、1回やってみて」みたいな。

 経験が少ないうちでも、「あれもやろう、これもやろう」と熱心にやった事件は、いい結果が出ることが多いと思います。活動が丁寧になるし、依頼者にとっても、全然悪いことではないと、私は思っています。

 難しい否認事件などは、積極的に先輩と一緒に受けるメリットは大きいと思いますが、そうであっても、熱心な1年目の人が弁護団の中にいることで成果が出ることもいっぱいあります。あまり自分でハードルを高く設定せずにやってほしいです。

 刑事弁護に興味のある人に対してはオープンにして、どんどん来てほしいという感じですか。

 ロースクールの仕事をしていることもあって、自分が関わっている早稲田のロースクール生にはいろいろな話もします。法廷を見にきたいという人がいれば、いつでも来てもらうようにしています。

 そうやって、刑事弁護をやってみたいという人がどんどん広がっていって、その中で、本当にやりたいと思った人や、向いているなと思った人が残っていくのが健全じゃないかな。間口は広いほうがいいと、私は思っています。

 そうしたら、新しいタイプの刑事弁護人が続々と誕生するかもしれませんね。今日は貴重なお話、ありがとうございました。

(2021年09月13日公開) 

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