連載 刑事司法における IT 利用の光と陰

刑事司法におけるIT利用の光と陰
第2回

遠隔取調べ

指宿信 成城大学教授


1 加速化する司法へのITの導入

 2022年3月15日に公表された「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」の取りまとめ報告書(以下「報告書」と略す)では、取調べ段階での遠隔化について提案しています。すなわち、被疑者に関して「検察官による弁解録取や裁判所・裁判官による勾留質問を、一定の要件の下で、検察官が検察庁に、裁判所・裁判官が裁判所に所在し、被疑者を警察署等に所在させ、ビデオリンク方式により行うことができるものとする」というのです。

 報告書はこうした遠隔化について現行法が禁止・制限するものではないとの解釈に立ちます。その上で、被疑者が感染症に罹患していて押送に困難がある場合で、被疑者に手続を丁寧に説明することを要件とすると提案しています。

 接見についても報告書は、感染症対策とは無関係に、「被疑者・被告人との接見交通について、非対面・遠隔でも行うことができるようにするため、情報通信技術を活用することが考えられる」として、弁護人と留置施設の距離が遠い場合にアクセスポイントを設けて可能とするよう提案しました。

 今回は、検討段階にある日本の刑事手続へのIT導入と比較するため、パンデミックを契機として、取調べの弁護人立ち合いの遠隔化や遠隔接見の拡大などが広がっている海外の状況を紹介します。((そうした技術的発展については、拙稿「イギリスにおける被疑者取調べとその可視化―「録音」「録画」で揺れる歴史とデジタル・ネットワーク化計画」判例時報2077号3頁(2010年)参照。))

2 遠隔取調べに関する英国の動き

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(2022年07月09日公開)


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