特別鼎談

映画『Winny』で、金子勇さんをどう描こうとしたか【後編】

映画の舞台裏と刑事裁判の暗部を語る

松本優作(監督)× 東出昌大(俳優・金子勇役)× 秋田真志(Winny弁護団・主任弁護人)

ネット史上最大の事件が映画化された。無罪を勝ち取るまでの7年間の裁判の中で、金子勇さんは何を思い、何を考えたのか。映画は、それをどう表現したか。金子さん役の東出昌大さんと監督の松本優作さん、そして無罪を導いた弁護団の秋田真志さんが、映画制作の舞台裏と日本の刑事裁判について語る。


熱量が演技の難しさをなくさせる

──7年もあった裁判を凝縮させて描くには、映画の構成が肝心だと思います。このあたりのことについて、お話ください。

秋田 Winnyの映画を見てもう一つすごいなって思ったのは、金子さんを、どうやって描くかという点です。実際の法廷で金子さんがソフトを動かしたのも、映画で描かれた通りでしたし、あのあたりは、どういうふうに構成しようとか、何かアイディアはあったんですか。

松本 現場で東出さんから「金子さんの純粋さとか、天才性とかをもう少し見せられないか」っていう相談を受けました。そこで、確かバックプロパゲーションの話を追加したんですよ。もともとの脚本にはなかったんですけど。それこそ三浦さんの言葉で「10年に一人の天才だ」という言葉も、ちょっと足したりしたと思いますね。

秋田 映画では金子さんが、被告人質問の途中でアイディアを思いついて、プログラミングを始めちゃうシーンがありますが、あれはシナリオですか。

東出 そうです。それで、「今、尋問中なのでやめてください」って壇先生から言われて、「でも、ちょっと」って言いながらパソコンをいじって、笑いが起きるのは台本ですね。

秋田 その金子さんを演じる中で、一番難しいところはどこですか。

東出 なんかありましたっけ。

秋田 難しくない?

松本 難しいといえば、すべて難しいだろうと、僕は客観的に思ってます。

秋田 あのときの裁判長は、氷室眞裁判長っていうんですけど、裁判長にP2Pをわからせるために、どう説明するのか。これはちょっと面白いなと思って見ていました。

東出 一番は、壇先生の熱量ですね。壇先生が「それは違う」とか、「これはそうだ」って言っていただいたのがよかったです。そういう意味で、難しさって、本当にないのかなって思います。

秋田 確かに、壇君は熱心にロケにも付き合っていたみたいですね。

(2023年07月31日公開) 


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