韓国刑事法の動き 第2回

韓国刑事法の動き 第2回

韓国刑法の特徴と最近の傾向

金台明(全北大学校法学専門大学院教授)
安部祥太(日本語訳)

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4 各種行政法上の処罰規定の量産

 韓国刑事法のもう一つの特徴は、行政法上の義務違反行為を処罰するための規定——すなわち、行政刑法が多いことである。韓国では、基本的な犯罪類型に関する知識を習得するためには、刑法を勉強するだけでは不十分である。刑法に加えて、道路交通法、交通事故処理特例法、情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律、不正小切手取締法、与信専門金融業法、弁護士法、不動産登記特別措置法、電子金融取引法、通信秘密保護法、集会及びデモに関する法律、重大災害処罰法なども勉強しなければならない。行政刑法は、いかなる国家にも存在する。しかし、韓国の行政刑法は、その数と内容が過度に複雑かつ膨大である。

 例えば、最近社会的問題となっているサイバー性犯罪(デジタル性犯罪)を解決するために、児童・青少年の性保護に関する法律によって、コンピューター等の通信媒体を利用した児童・青少年性搾取(わいせつ)犯罪を処罰している。また、性暴力犯罪の処罰等に関する特例法によって、通信媒体利用淫乱(わいせつ)行為、カメラ利用撮影、虚偽映像物頒布、撮影物利用脅迫・強要を処罰している。さらに、情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律が、情報通信網を利用した性搾取(わいせつ)犯罪とストーカー犯罪を処罰する規定を置いている。この他にも、情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律は、情報通信網を利用した名誉毀損や脅迫を処罰する規定を置いている。他人の名誉を毀損する書き込みをインターネット上に掲載したり、携帯電話を利用して反復的な脅迫行為をしたときは、刑法ではなく情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律によって処罰される。

 各種の義務を課している行政法の内容は、それ自体がそもそも複雑である。そのような複雑な行政法の内容に処罰条項が結合すると、その内容はより一層複雑になる。例えば、2021年に改正された韓国の道路交通法は、電動スクーター・電動キックボード・電動アシスト自転車などの「個人型移動装置」を従来の「原動機付自転車」の一類型として追加しつつ、運転免許、制限速度、走行区域、飲酒・薬物運転の処罰について両者の間に差を設けている。しかし、その内容は複雑であり、専門家でさえも理解することは容易でない。道路交通法のうち飲酒運転に関する規定だけを見ても、血中アルコール濃度に応じた飲酒運転、飲酒測定拒否、飲酒運転の再犯など、多様な規定が設けられており、その内容を把握することは決して容易でない。交通事故の処罰に関する法律である交通事故処理特例法の内容も、決して分かりやすいものではない。

 行政刑法は、その内容が複雑であるだけでなく、実質的に行政法上の制裁の対象である行為を刑事罰の対象としている場合が多いという批判が寄せられている。その他にも、韓国の行政刑法に対しては、多数の下位法令への委任規定、不明確な概念の使用、因果関係の緩和、両罰規定による刑事罰の範囲拡大など、刑法の基本原則である罪刑法定主義や責任主義を脅かす内容が少なくないと批判されている[1]

5 韓国刑法の最近の傾向と刑事司法の変化の方向

 2024年、韓国では、憲政史上二度目となる執権政治勢力による親衛クーデター・内乱が発生した。この内乱は、政権に対抗する政治勢力や国民の強固な抵抗を受けて失敗した。現在、内乱を引き起こしたり加勢した人々は、峻厳な法の裁きを受けている。他方で、内乱が失敗に終わった後、国民の選択を受けて政権を握った政治勢力は、過去の権威主義政権の手足として機能した検察と裁判所の改革(司法改革)に力を注いでいる。かつて韓国で行われた司法改革は、主に捜査の要件や手続を強化したり、警察に対する検察の捜査指揮権を制限したり、検察による直接捜査の範囲を制限したりすることを内容としていた。しかし、最近の司法改革は、検察の直接捜査権限、捜査指揮権、さらには補完捜査権限まで剥奪し、検察を純然たる公訴機関として縮小する方向に進んでいる。それだけでなく、2025年2月末には、裁判官や検察官が違法・不当な目的を持って法を歪曲する行為(法歪曲罪)を処罰する刑法改正も断行された[2]

 韓国刑法は、1953年に制定されてから2026年3月までの間に28回も改正されるほど、社会の変化に敏感に反応してきた。その変化は、今もなお続いている。刑事実務を担当する法曹関係者はもちろん、刑法を研究し、あるいは学ぶ人々も、六法を毎年購入して新たな内容を確認しなければならなかったり、政府の運営するウェブサイトにその都度アクセスして改正の有無や内容を確認しなければならないほどである。韓国社会と韓国刑法のダイナミズム自体は、責められるべきことではない。しかし、刑法の基本原則である罪刑法定主義や責任主義が揺らぎ、一般人はもちろん法律専門家でさえ、その内容を把握することが困難な現実がある。その一方で、近時、与党が推進している司法改革については、捜査力と司法の独立性を弱体化させ、刑事司法の政治化を加速させるという批判が寄せられている。

 近時の韓国で生じた政治的混乱は、刑事司法の主眼を政治犯処罰へと大きく移すきっかけとなった感がある。政治犯の処罰も、確かに重要である。しかし、一般国民にとっては、市民生活と密接に関連する犯罪への対策や犯罪被害者等の保護の方が、遥かに重要な問題である。大韓民国憲法には、被疑者・被告人の権利保障に関する様々な規定が設けられているものの、肝心の犯罪被害者等の権利に関する内容は十分でない。また、刑事訴訟法上の犯罪被害者等の地位も、刑事訴訟の積極的な参加者という位置づけではなく、消極的な受益者としての地位に留まっている。ドイツやフランスなどの欧州諸国はもちろん、日本も、従前から刑事司法における被害者等の地位強化・向上のための措置を講じてきた。それらと比較すると、韓国の努力は不十分なレベルに留まっている。これを受けて、韓国では、憲法に被害者等の権利を明示したり、刑法や刑事訴訟法を改正して刑事司法における被害者保護を強化すべきであるという声が高まっている[3]

【参考文献】
・김종원, 한국형법개정의 기본방향과 문제점, 성균관법학1권1호 (1987년)
・허일태, 위대한 법조인 효당 엄상섭의 형법사상, 동아법학34호 (2004년)
・윤동호, 특별형법전의 정비를 위한 기초연구, 한국형사법무정책연구원 연구총서 05-19 (2005년)
・배종대, 세계화와 한국형법의 정체성, 저스티스92호 (2006년)
・허일태, 법왜곡행위와 사법살인의 방지를 위한 입법정책, 형사정책연구70호 (2007년)
・신동운, 가인 김병로 선생과 법전편찬 : 형법과 형사소송법을 중심으로, 전북대학교 법학연구25집 (2007년)
・허일태, 한국형법개정의 올바른 방향 : 형법총칙을 중심으로, 비교형사법연구14권2호 (2012년)
・서보학, 판사 및 검사의 법왜곡에 대한 대응방안: 법왜곡죄의 도입을 중심으로, 경희법학49권4호 (2014년)
・김태명, 현행 성폭력범죄 대책의 문제점과 보완방향, 서울법학25권4호 (2018년)
・정현미, 스토킹범죄 규제를 위한 입법방향, 이화젠더법학12권3호 (2020년)
・원혜욱, 스토킹범죄 피해자의 실효적인 보호방안, 피해자학연구29권3호 (2021년)
・전현욱 외, 형사입법의 실제와 주요정책별 입법평가(Ⅱ), 한국형사법무정책연구원 연구총서 22-B-07 (2022년)
・김태명, 프랑스·독일·일본에서의 범죄피해자의 형사절차 참가제도와 우리나라에 대한 시사점, 피해자학연구32권2호 (2024년)

注/用語解説 [ + ]

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(2026年06月12日公開)


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