連載 裁判所書記官が見た刑事弁護

裁判所書記官が見た刑事法廷 第10回

証人尋問

中村圭一 元裁判所書記官


 証人尋問を行った際には、書記官がその内容を調書の形で残すことになりますが、その調書の種類にも色々あることをご存じでしょうか(以下の記載は、「被告人質問」の場合もほぼ同様になります)。

 数回の公判で結審するような自白事件においては、「要旨調書」が作成されるのが一般的です。刑事訴訟規則44条の2の規定により、供述の要旨のみを記載する調書を作成することができますが、これを「要旨調書」と呼んでいます。

 この調書の作成には、訴訟関係人の同意が必要とされています。以前は、裁判官が訴訟関係人に同意するかどうかその都度確認していたこともありました。しかし、裁判官も書記官も同意の確認を忘れてしまうことが割とあるため、正確な文言は覚えていませんが、法廷の席上に、「特にご意見がない場合は、要旨調書を作成しますのでご了承ください。」といったような注意書きを置くような運用が増えてきていました。

 書記官にもよりますが、私が要旨調書を作成する場合には、パソコンを法廷に持ち込んで、証人尋問と同時に尋問の要旨の入力を行い、期日後に微修正する形で作成していました。

 また、最近は、速記官の数が減っていることからごく一部の部や事件のみの運用にはなりますが、速記官による「速記録」を用いて調書を作成することもあります。これは、速記官が精度の高い「速記録」を作成してくれるため、書記官にとってはかなり楽なのですが、クセの強い速記官とのやり取りの方が面倒くさいような側面もあったりします。

 それ以外については、「録音反訳」を利用して作成することがほとんどになります。録音データを基に業者が逐語録を作成してくれる……

(2023年02月02日公開)


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