連載 裁判所書記官が見た刑事弁護

裁判所書記官が見た刑事法廷 第15回

裁判員バッジ

中村圭一 元裁判所書記官


 裁判員制度がスタートした頃、裁判員を務めていただいた方々に「裁判員バッジ」というものを配布していました。確か予算を取った名目は別のものだったような気がしますが、実質的には、裁判員へのお礼ということになるでしょうか。裁判所のすごく偉い方の鶴の一声でスタートしたと聞いています。

 私は、最高裁判所で、この裁判員バッジの調達をする業務を担当していました。当初、ヤフオク!等で売られないためにでしょうか、裁判員バッジには、庁名とシリアルナンバーが振られていました。そのため、次の年に各庁で何人くらいの裁判員がいるのかを予測しながら調達をする必要がありました。また、シリアルナンバーを連番で管理しているため、間違った数字がつけられていないかどうかも確認する必要がありました。

 個人的には、この裁判員バッジの配布自体、裁判員に感謝を示す記念品としては最適だと思っていました。別途感謝状も贈呈されていましたが、裁判員バッジの方が裁判員の方に喜ばれていたようです。しかし、ヤフオク!等で売られる危険があるからと言って、管理が大変になるシリアルナンバーをつけるのはどうかと考えていました。実際、途中からシリアルナンバーをつけることはなくなったようです。

 裁判所の内部では、裁判員バッジを感謝状と別に配ること自体、割と不評だったみたいで、早く終わらせたいと考えていた人も結構いるようでした。しかし、先ほど述べたように、裁判所のすごく偉い方の鶴の一声で始まったのですから、その方がいらっしゃらなくなってしばらくしてから製造が中止となったという噂も聞こえてきました。

 現在では、既に裁判員バッジの在庫はなくなっている可能性が高……

(2023年07月29日公開)


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