連載 裁判所書記官が見た刑事弁護

裁判所書記官が見た刑事法廷 第22回

略式命令

中村圭一 元裁判所書記官


 正式な裁判を行う代わりに、罰金を支払うことで終了する「略式命令」の手続も裁判所で担当しています。

 私は小規模支部で刑事事件全般(地裁の刑事事件、簡裁の刑事事件、令状請求、勾留請求、略式命令)をすべて一人で担当していた際に、略式事件を取り扱っていました。主に、「道路交通法違反略式事件」とその他の「一般略式事件」に分かれていたと思います。

 検察庁がある程度定期的にまとめて略式事件を持ってきて、それを随時処理することもありますし、勾留されている被疑者が、在庁略式で起訴されるような場合もあり、その場合は、裁判官が略式命令を出した後で書記官が略式命令謄本を被告人に直接交付したりしていました。

 また、道路交通法違反略式事件だけを毎月第3水曜日などと決めて、その日に警察、検察庁の職員が裁判所に集まり、警察の取調べ、検察庁の取調べ、裁判所の略式命令、罰金の納付まで1日で終わらせる、「三者(三庁)即日処理」という方法で、略式事件を一気に処理する、いわばベルトコンベアーのように進める手続もありました。

 飲酒運転をした人、無免許運転をした人、かなりのスピード違反をした人などが当日出頭してくるわけですが、手続を軽く見ているような人が案外多く、略式命令を受けたら前科になるという認識もないような人が多かったような記憶があります。罪の意識もあまり感じていないような人も多かったように思います。

 「略式」という名前からすると、一見簡単な手続のように思えますが、略式命令の「適用した法令」欄の条文の記載漏れなどが起きやすく、執務上は結構気を遣った記憶があります。例えば、併合罪、観念的競合、酌量減……

(2024年02月14日公開)


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