大麻使用を新たに罰する改正法の仕組みと問題点 第3回【最終回】

大麻使用を新たに罰する改正法の仕組みと問題点 第3回【最終回】

薬物の国際管理体制の成立とそのほころび

園田 寿 甲南大学名誉教授


1 はじめに

 日本を含めて世界のほぼすべての国は、1961(昭和36)年の「麻薬に関する単一条約」(単一条約)、1971(昭和46)年の「向精神薬に関する条約」(向精神薬条約)、1988(昭和63)年の「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」(不正取引防止条約)という3つの麻薬禁止条約に加盟している。そして、これらの条約の遵守状況は、国際麻薬統制委員会(INCB)によって監視されている。

 オランダやウルグアイ、最近ではアメリカ(の多くの州)やカナダなどで大麻の娯楽的使用が認められたが、このような動きは国際法(麻薬単一条約)に違反するとINCBは警告してきた。しかし、INCBには条約の履行を強制する正式な権限はなく、今のところINCBの警告は世界の大麻規制緩和の動きを止めるには至っていない。

 21世紀に入ってから、世界の薬物取締政策に劇的な変化が生じた。大麻問題は犯罪問題よりはむしろ健康問題として認識されるようになり、とくに刑罰による禁止ではなく、(タバコやアルコール飲料で実施されているような)規制という公衆衛生的な政策に方針を転換する国や地域が出てきた(今年の4月にはドイツが大麻禁止から大麻規制に踏み出し、成人について少量の大麻使用を合法化した)。こうした変化は、違法薬物のない世界という規範的目標を掲げてきた国際的なコンセンサスに、重大な亀裂が生じていることを示すものである。

 そこで以下では、とくに現在の大麻取締政策の基礎を作り上げた1961(昭和36)年の単一条約に関する問題点を検討したい。

2 単一条約以前

 アヘンや大麻、コカインなどの精神作用物質……

(2024年04月26日公開)


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