4 2018年検察庁報告書
表1に列挙されたような度重なる重大誤判事件の発生を受けて、カナダ検察当局も誤判原因の調査を続けている。たとえば、2018年に公表された「危機に瀕する無実者たち──カナダにおける誤判防止の継続的な警戒の必要」と題された報告書が連邦検察庁(PPSC:Public Prosecution Service of Canada)から公刊されている((https://www.ppsc-sppc.gc.ca/eng/pub/is-ip/index.html))。スティーブン・ビンドマン氏(司法省)とエリック・トルファン氏(アルバータ州検事)が共同議長を務め、起草メンバーは延べ36人に上った。メンバー全員が連邦もしくは州の検察、警察関係者で占められている。既に2005年((“Report on the Prevention of Miscarriage of Justice”, (2005).))、2011年((“The Path to Justice: Preventing Wrongful Convictions”, (2011).))にも同種の報告書が刊行されており、今回の報告者は2011年の報告書で示された勧告と現状とを比較した内容となっている。
⑴ 報告書の背景
2005年報告書では誤判原因として、捜査・訴追機関の視野狭窄現象、誤った目撃証言、虚偽自白、同房者証言、科学的証拠の誤りと専門家証人の過失が挙げられていた。この報告書は司法界からも歓迎され、海外でも多数引用される内容となっていた。その後、2005年報告書をアップデートした2011年報告書が作られた。その名も「正義への道──誤判の防止」と題され、2005年報告書で示された勧告を実現するための取組みなどが紹介されている。
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(2025年06月06日公開)