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笹倉香奈

『オアシス・インタビュー』第2回

【1/3】えん罪救済センターとSBS検証プロジェクト は何を目指すのか

実務家と研究者との連携

インタビューアー:小石勝朗(フリーライター)


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センターに救済を依頼する手順

小石 だいぶ協力者が広がってきていますね。どういう手順で支援の決定をするのでしょうか。

笹倉 えん罪救済センターのホームページに支援要件についての説明や、申込書などがあります。それを見てもらうと分かりやすいかと思います。ただ、刑務所など刑事施設に入っている人は閲覧できませんので、連絡があればこの申込書をそのまま送ることになります。そこの1頁目にどういう事件を受けられるかが明記されています。

 現在の支援要件は「犯人でないのに犯人として起訴された刑事事件」あるいは「犯罪でないのに犯罪として起訴された事件」で、つまり、犯人性や犯罪性を争っている、全くの無実であることを争っている事件であることです。判決が確定しているか確定していないかは問いませんが、起訴されたあとの事件であることは必要です。

 センターがDNA鑑定などの客観的証拠によってえん罪の立証が可能であるかどうかという観点から検討し、お手伝いができると考えた場合には受けて、さらに調査を進めることになっています。

小石 最初の段階では、どの程度調査をするのですか。本人から送付された訴訟資料などをご覧になるだけでしょうか。

笹倉 まずは訴訟資料を検討することが重要です。必要な書類がどのようなものであるかも申込書に書いてあり、申込者が持っているものには「〇」を付けて、そのコピーを送っていただくことになります。判決書は必要ですが、訴訟関係のいろんな書類、たとえば起訴状から始まり、上告趣意書や控訴趣意書、既に再審を請求している場合には再審請求書もあれば送っていただきます。あとは申込書です。どういう理由でえん罪を主張しているかも拝見し、必要な場合にはさらに書類を取り寄せ、直接本人に会って事情を聞いたり、元の弁護人に連絡を取ったりすることもあります。専門的な知見が必要な場合には専門家に見てもらいます。このように調査については普通の刑事弁護活動と同じようなことをします。

小石 これまでに何件ぐらいの申込みがありましたか。

笹倉 立ち上げ前の2015年の段階から数えて、20192月までに306件の申込みをいただいています。ただ、そもそも条件に当てはまらない刑事事件でない案件もありますので、そういうものについては第1段階のスクリーニングでお断りせざるを得ないということになります。

日弁連の再審部会との違い

小石 日弁連には人権擁護委員会の再審部会があって、同様の取組みをしているそうですが、違いはあるのでしょうか。

笹倉 日弁連は再審部会ですので、再審事件が前提です。しかも、実際に支援されるのは弁護士が付いて、既に再審請求をしている事件が多いかと思います。手続的な段階が違いますし、えん罪救済センターは弁護人が付いているかどうかにかかわりなく、申込みがあった事件について検討します。

 基本的には同じような目的の取組みです。どこかに支援してもらえれば本人にとっては一番いいと思いますので、その意味では再審部会とは別の選択肢を作ったことになるのかなと思います。

審査をする上での問題点は

小石 日弁連再審部会の再審支援事件でも支援するかどうか審査があって、そこで落ちたら事実上、再審請求ができなくなるおそれがあると聞いています。えん罪救済センターでもそのような問題はあるのでしょうか。

笹倉 審査が「厳しすぎるんじゃないか」というご意見がたまにあります。ただ財政的な限界もありますし、そもそも立証手段や見込みをも考えますと我々が具体的なお手伝いをできる事件ではない場合もあって、残念ながらすべてを受けることはできません。日弁連の再審部会にも様々な理由で事件を考慮して審査せざるをえないという限界があるのだと思いますが、再審部会がなかったら救われない事件もあるので、やはり重要な組織だと思います。

 ただ、もともと個別事件の支援を目的とする私的な団体である私たちのほうが自由に活動できるとは思います。

 なお、付言しますと、えん罪救済センターがお手伝いをすることが困難な事件でも、資料を見ていて判決の事実認定や手続に疑問のあるものはたくさんありますし、制度上の問題を感じることも多いです。お手伝いできないというお手紙を出すときは、いつも断腸の思いです。

小石 事件の審査という点では、アメリカのイノセンス・プロジェクトでもそういう問題はあるのでしょうか。

笹倉 アメリカでは申込み数千件、数万件のうち10件程度しか受け付けていませんから、アメリカのほうがかなり厳しく審査をしていると思います。アメリカ全体で60団体か70団体ぐらい組織がありますが、それぞれの組織によって審査の基準が違います。「無実を訴えている事件」という基準は一緒ですが、DNA鑑定で救える事件しか受けない団体もあります。第1号のニューヨークのイノセンス・プロジェクトはいまだにそうです。

 また、例えば、性犯罪事件で同意の有無を争っている事件を受けない団体もあるし、そうではない所もあるので、千差万別です。

小石 70くらいある団体のどこにでも救済の申し出ができるのですか。

笹倉 アメリカは州によって法律や制度が全く違いますから、基本は事件が起こった州にある団体に申し込むことになります。今は各州に1つ以上はイノセンス・プロジェクトができているので、そこに申し込むのが普通です。

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