東京TSネット・コラム一緒に考える<障害のある人の刑事弁護>

一緒に考える〈障害のある人の刑事弁護〉第3回

捜査段階と「合理的配慮」 (その1)

山田恵太 弁護士


1 はじめに

 前回のコラムでは、刑事手続において、障害のある人に対する「合理的配慮」の提供が求められていることについて触れました。

 そこで、今回は、もう少し具体的に、どのような「合理的配慮」が必要とされるのか、特に捜査段階の場面に注目して、考えていきたいと思います。

 なお、一口に障害といっても、障害の種別はさまざまなものがあります。その中でも、今回は、知的障害・発達障害を念頭において考えていきます。

2 障害のある人の特性

 障害のある人には、さまざまな障害特性があります。その障害特性は、それぞれの障害によっても異なりますし、何よりも、1人ひとりによって全く異なるものです。「○○という障害がある人は全て××という特性がある」などということはできません。実際の場面では、それぞれの人ごとに、どのような特性があるのかについて、本人や周囲の人から聴いたり、専門家に意見を聴くなどして把握する必要があります。

 しかし、ここでは、合理的配慮を考える前提として、障害特性の例をいくつかあげさせていただきます。

① 抽象的概念の理解の困難さ
 知的能力の低さや偏りから、時間・数量・空間といった事柄の理解が難しいという特性を持った方がいます。抽象度が増すにつれて困難度も増していくことになります。
 そのため、例えば、今現在起こっていることについては理解できるものの、過去や未来といった漠然としたものについては、理解・判断することが難しくなります。

② 未理解同調性
 理解できていないことであっても、あたかも理解したようにふるまい、同調し……

(2022年09月07日公開)


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