連載 刑事司法における IT 利用の光と陰

刑事司法におけるIT利用の光と陰
第11回

位置情報の網羅的取得——ジオフェンス令状

指宿信 成城大学教授


1 はじめに

 2021年1月6日、数百人の暴徒が米国の首都ワシントンにある国会議事堂に乱入した事件(以下「議事堂襲撃事件」という)をご記憶でしょう。多数の暴徒が一定の時間に議事堂内にいましたが、現場での逮捕者は限られていましたので襲撃に関わった暴徒を特定するために特別な令状が使われました。それが「ジオフェンス令状(geofence warrant)」と呼ばれる令状です。これは、特定エリアに滞留していた移動体端末の位置情報を網羅的に収集している企業に対して、その情報を提出するよう求める特殊な令状です。

 その企業とはGAFAの一角を占めるGoogle社です。暴徒が移動体端末を使用し(その可能性は非常に高い。多くの暴徒が現場で自撮りしている光景が確認されています)、その移動体端末でGoogle社のサービスを利用していれば(その可能性も極めて高い)、個々の端末はその位置情報を同社のサーバーに記録されることになります。位置情報の捕捉可能性の高さは、様々なデータで裏付けられるでしょう。すなわち、Google社の提供する地図アプリ、Google Mapsはスマートフォンのアプリのダウンロード順位では4位であり、そのシェアは70%以上((https://www.onthemap.com/blog/google-maps-statistics/))とされており、地図アプリ商品として米国では年間ダウンロードシェアでも2位のWazeの2.5倍((https://www.statista.com/statistics/865413/most-popular-us-mapping-apps-ranked-by-audience/))です。それ以外にもGoogl……

(2023年04月28日公開)


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