連載 刑事司法における IT 利用の光と陰

刑事司法におけるIT利用の光と陰
第15回

スマホへのアクセス——ロック解除問題

指宿信 成城大学教授


1 はじめに

 令和3年版の情報通信白書によると国内の携帯端末保有の世帯割合は9割を超え、スマートフォン(以下スマホと略)保有率も8割を超えたということです((https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd111100.html))。NTTドコモによる携帯端末の個人所有状況調査でも、2022年には94%が何らかの端末を保有しており、国民のほとんどが利用していると考えられます((https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1402854.html))。特に携帯端末の中でもスマホは犯罪者にとっても重要なツールとなっています。当然、捜査機関にとってスマホ内部に蓄積されているデータや通信通話記録を取得することは不可欠になっています。

 そのための障害と考えられるのがスマホのロック機能です。よく知られているように、スマホのロック機能には概ね6つのタイプがあるとされています。すなわち、①パターン認識、②PIN(暗証番号。パスコードやパスナンバーとも呼ばれる)、③パスワード、④指紋認証、⑤顔認証、⑥虹彩認証です。①はスマホ画面上にある9つの点を線で繋げる方法、②は数字4桁以上によるロック設定、③はアルファベットと数字を組み合わせる方法です。④はスマホの指定された場所に指を当てて、⑤、⑥はスマホのカメラに向かって顔や目を向けて、認証させる方法です。このうち、①、②、③はスマホ所有者の供述によって、④、⑤、⑥についてはスマホ所有者の協力によって、解除することが可能です。

 ところが、スマホ所有者がロック解除に必……

(2023年08月31日公開)


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