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笹倉香奈

『オアシス・インタビュー』第2回

【1/3】えん罪救済センターとSBS検証プロジェクト は何を目指すのか

実務家と研究者との連携

インタビューアー:小石勝朗(フリーライター)


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申込書が来た後の審査手順

小石 えん罪救済センターに申込書が来た後は、事件についてどういう検討をするのですか。

笹倉 第1スクリーニング、第2スクリーニングというのがあります。運営委員の先生たちに担当の事件を振り分け、支援要件に当てはまるかどうか検討していただいています。その審査結果の報告・検討は全体の運営会議でやることになっています。今、主な運営委員が住んでいる場所は東京、大阪、京都ですが、その3カ所を結び、あるいはほかの場所からもスカイプで参加してもらい、月に1回運営会議をやっています。運営会議は大体1時間半か2時間です。審査結果の報告をして、「もうちょっとこの辺は調べたほうがいいんじゃないか」ということを、参加している各領域の専門家も一緒に、いろいろな観点から検討しています。

 それとは別に、関西では月に1回、弁護士たちで丸一日使って審査会議をしています。土曜日や日曜日に朝10時から午後5時まで缶詰めになってずっと事件について話し合い、調べてもらうことをしています。ここでは、刑事弁護の観点から調べてもらっています。

 いいかげんな審査はできないとみんな思っているので、一件一件かなり丁寧に審査をしています。

小石 現時点で紹介いただける事例はあるでしょうか。

笹倉 残念ですが、事例はまだ公表できる段階になっていません。調査している事件は数十件あります。進んでいるものは進んでいます。例えば、「画像鑑定だったらこの先生に聞いてみようか」とか、供述分析だったら浜田先生、パソコン関連の問題が問われるときは稲葉先生に見てもらうとか、微物鑑定が問題になったら平岡さんとか、そのほかにも法医学やDNAに関するものもあります。

 罪種は、重いものから軽いものまであります。殺人事件もありますし、傷害事件もあります。被告人段階の人もいますし、確定して実刑になった人もいれば、もう既に出所した人もいますので、手続段階は本当にいろいろです。

小石 1件「無罪」という結果が出れば、その過程を全部お話しいただけるのでしょうね。

笹倉 そうです。救済の具体的な見込みが出てくると、その支援を社会に訴えていかなければいけないので、「記者会見」ということにもなると思いますが、今の段階ではそこまで至っていません。

センターの活動には学生も

小石 えん罪救済センターの広報と宣伝はどのようにやっているのでしょうか。

笹倉 ホームページとフェイスブックが中心です。学生がセンターの活動に非常に興味を持ってくれています。学生ボランティアに80ぐらいが登録していて、甲南大学、立命館大学、龍谷大学、近畿大学の学生がいます。2〜3カ月に1回集まって交流会をしたり、イベントの手伝いをしたりしてくれています。広報的なことはその学生たちがやってくれています。甲南大学の学生も40人ぐらいいて、その活動が評価されて甲南大学の学生部長特別賞をもらっています。

 20178月の神戸新聞で取り上げていただいたのですが、学生がTシャツとかバッジのデザインをして、イベントのときにはそれを着ています。

 「獄友」という映画があります。神戸元町の映画館で上映されたときには、コラボレーションしてイベントを一緒にやりました。観客の皆さんとクイズ大会をやったりして、学生が来ると盛り上がりますね。

 2018年3月には、学生主催でシンポジウムもやりました。布川事件の櫻井昌司さんと京都弁護士会の池田良太先生を呼んで、西山美香さんの湖東記念病院事件についてパネルディスカッションをしました。また、2018年は灘中学校、甲南高校へ、えん罪に関する授業を学生がしに行きました。

小石 一般の皆さんに対するPRや宣伝啓発活動を学生がやっているのですね。

笹倉 学生たち自身もいろんな刺激になると思います。警察官志望の学生もいますが、「こういう問題が警察にあるんだ。じゃあ、そういうことをやらない警察官になろう」と思って卒業してくれるので、ありがたいことです。

小石 そういう問題意識のある若者が警察の刑事部門に進んでいってほしいですね。

センターの財政・人的問題

小石 センターの運営資金など財政面は、どういうかたちですか。

笹倉 それが一番の問題です。審査はすべて無償で、ボランティアで刑事弁護をしている弁護士たちにお願いしています。専任の弁護士がいないので、そこは何とかしなければいけないといつも考えているところです。事務的な経費、交通費、謄写費用など実費は寄付で何とか賄っていますが、弁護士への謝礼は全く出せていません。本当は専任の弁護士を雇い、その人に専従してもらうのが理想的ですが、なかなかそうもいかないというのが現状です。

小石 ケースを深く掘り下げた場合には、鑑定料など費用がかなりかかることになりますね。

笹倉 専門家に相談するときの費用もかなり負担になりますが、それも寄付で賄うことになります。その他に、送られてきた資料の整理が必要ですが、それはボランティアがしてくれているので、今のところうまくいっていると思います。

小石 規模にもよるでしょうけれど、年間大体いくらくらいあると、まわっていくのでしょうか。

笹倉 部屋も借りて、専任の弁護士とスタッフを置いて、スタッフも事務をする人と広報の専門家も雇うとなると、年間2、3千万円必要になると思いますが、そこまで集めることは現状ではなかなか難しいでしょうね。

 アメリカのニューヨークのイノセンス・プロジェクトは専任スタッフが80人ぐらいいますから、本当に規模が違いますね。

小石 アメリカの場合も、運営資金は寄付でしょうか。

笹倉 寄付といっても、大口の何千万円という寄付があるので、うらやましいですね。企業が社会貢献の一環としてやっています。人権問題も環境問題と同じようなことだと思うので、刑事弁護の問題が社会貢献として世間に認められれば一番いいとは思います。

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