連載 取調べ拒否! RAIS弁護実践報告<br>第14回——事例報告⑬ 麻薬及び向精神薬取締法違反被疑事件

連載 取調べ拒否! RAIS弁護実践報告
第14回——事例報告⑬ 麻薬及び向精神薬取締法違反被疑事件

取調べ拒否と「被疑者取調べ未了」

増井俊輔(東京弁護士会)


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おわりに

 本件は、コカイン摂取の被疑事実のまま家裁送致された。Aさんの状況等を踏まえてAさんと協議のうえ、審判では施用した薬物の種類について争わないこととなった。最終的に、麻薬であるいわゆるコカインを、麻薬である大麻と誤認して自己の身体に摂取した、などという審判に付すべき事由にて審判を受け、保護観察処分となった。

 本件では、取調べ拒否の弁護活動の目に見える成果は見出しづらいかもしれない。しかし、本人が確実に黙秘権を行使することができ、出室拒否により生まれた時間も投じて、違法薬物との今後のかかわり方について、ともに検討する時間をとることができた。

 今後も、黙秘権を行使する事案、とりわけ取調べ拒否の事案で、「被疑者取調べ未了」を理由とする勾留期間延長の裁判に異議を唱え続けたい。「被疑者取調べ未了」を延長理由として裁判所が是認することは、取調べ拒否を明示している被疑者に対して、捜査機関に被疑者取調べの機会を与え、被疑者の黙秘権保障を危殆化させるだけである。黙秘権は、単に沈黙する権利ではなく、取調べを強制されない権利として理解すべきである。「被疑者取調べ未了」を裁判所が是認した結果、Aさんを含めた依頼人らが、いかなる苦境に陥り続けたかを、常々思い起こすようにしたい。

(『季刊刑事弁護』126号〔2026年〕を転載)

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(2026年04月19日公開)


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