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『オアシス・インタビュー』第5回 柴田守 氏に聞く

性犯罪の量刑の実証研究からみえてくるもの

裁判官や裁判員はどのように量刑を決めているのか


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6 諸外国の量刑手続

—— 欧米、特にアメリカの量刑判断は日本とちょっと違うと聞いています。裁判で有罪・無罪の事実の判断をしたのちに、有罪であれば量刑専門家に任せるとういうかたちをとっています。これは日本の裁判員裁判で量刑まで判断していることとたいへん違っています。

柴田 アメリカは、広く知られているように陪審制度ですが、トライアル(事実審理)に移る前の段階で、有罪か無罪かの答弁手続があります。一部無罪も含みますが、無罪答弁をした場合にトライアルに移るわけです。有罪答弁をすると量刑に移りますが、そこには陪審員は入らずに量刑を決めていく形になります。したがって、有罪答弁をしたことと、陪審員手続で有罪評決があったものについて、裁判官による量刑手続に移行することになります。

 量刑は、アメリカでは基本的に量刑基準(センテンシングガイドライン)が規則で細かく決められていますので、それに従ってある程度の位置付けを決めていくことになります。

 それを決める際に、裁判官は、裁判所に所属する保護観察官が量刑基準を基にして作った量刑勧告報告書を踏まえて、それを参考にして実際の量刑を決め、宣告刑の内容を決める形にしています。手続を二分しているかたちです。そこは、先ほど言われた専門家、裁判所に所属する保護観察官が報告書を作成する形になっています。

 日本でも、少年の事件では、鑑別所の報告や家裁調査官の報告を裁判官に送り、それに拘束されるわけではありませんが、裁判官がそれを参考に保護処分に付すかどうかなどを判断します。報告書を参考にするという点に関しては、アメリカでもそれと同様な形が取られています。

—— そのガイドラインはどのように作っていますか。

柴田 アメリカの場合は、例えば、殺人でもいろいろな類型がありますので、社会的な位置付けで点数化しているのが現状です。先例を基に数値化しています。最近、ドイツでもそういう形を採り入れようとする傾向があるみたいです。

 このように量刑判断についても見える化が必要だと思いますが、日本の場合は全くブラックボックスですから、どういうモデルだったのかも分かりませんでした。このような実証研究を重ねることによって、徐々に見える形になってきている気がします。

7 今後の量刑研究の方向性は?

—— 最後に、柴田先生の今後の量刑研究の方向性についてお聞かせください。

柴田 次の段階として、控訴審での量刑審査についてやりたいと思っています。具体的には、一審の判断と、控訴審の判断を比較・検討することです。

 裁判員裁判を導入する際に、控訴審の量刑審査のあり方が問題として残されました。「第一審かぎりで、控訴審での量刑審査はなくしてもいい」という議論もありましたが、結果的に今までの形で残されたわけです。地裁の判断を控訴審で破棄した場合に、「裁判員裁判の意味がない」という批判が当然出てきます。

 その批判に応えるためにも、比較分析をしていかなければいけない。司法協会から研究助成を受けて、千葉大学の法社会学の佐伯昌彦先生と共同で、控訴審の量刑不当などに関する破棄について、判断基準を調査・研究しています。実際には破棄だけではなく、もうちょっと幅広くやっていくつもりです。

 それは、学界の関心事でもあるし、一般国民の関心でもあると思いますから、それを分析して、分かりやすく示していくことが求められていると思っています。

—— ありがとうございました。

(2020年10月05日公開) 

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