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漫画家・浅見理都が刑事弁護人に聞くザイヤのオオカミ

第1回 坂根真也弁護士に聞く

天職としての刑事弁護

常に弱者の立場に立てる


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依頼者に弁護を拒否されたら

 依頼者に「自分の有利になるようなことはしないでくれ」と言われたら、坂根先生だったらどうしますか。

 やけっぱちになって、「もういいです」と感情的に言う人もいます。その時は、ちょっと時間をおいたり、何度か話し合いをして、説得というか、考え直すようには言います。それをすることの意味を十分にわかったうえで、それでも依頼人が選択するのであれば、それは本人の自由だと思います。

 どのあたりで見切りをつけるんですか。例えば「公判が近付いてきた」ときに、どうするのですか。

 そこは予想される不利益との相関で決まると思います。座間事件のように死刑が出るような場合は、本人が「死刑でもいいです」と言っていても、弁護人として、「じゃあ、それでいいですね」となるわけにはいきません。

 認めても絶対に執行猶予が出るとか、罰金で終わるというときには、仮に弁護人が無理に争って、半年後に無罪が出たとしても、会社を首になったり、離婚してしまったりすれば、何の責任も取れないわけです。

 だから、メリット・デメリットをきちんと説明して、本人がその選択をするのであれば、それはやむを得ません。

 刑事弁護のゴールは、依頼者の意向も一緒に話し合いながら決めていくということでしょうか。

 そうです。基本的には、1日でも早く外に出る、そのために刑を軽くするのが刑事弁護人の最大の仕事です。そこに依頼人の意向も踏まえて、最終的に決めていくということです。

依頼人からの感謝

 依頼人から後日、手紙をもらったことはありますか。

 もちろんあります。若い人に言うことがあるとすれば、感謝されるためにやりたいと考えたらできなくなります。結果として感謝されたら喜んでいいし、うれしいけれど、それを求めたらいけないと言っています。

 逆に言うと、結果が出なければどんなに感謝されても、意味がありません。頑張って結果がダメだったとき、「先生がこれだけ一所懸命頑張ってくれたから、何も言うことはありません」と言う人もいますが、何の慰めにもなりません。

 「そこで良しとしたらダメだ」という意味を込めてですか。

 そうです。常に結果を求めないといけないですね。

弁護士に適する資質は

 刑事弁護を辞めたいと思ったことはありますか。

 私自身、辞めたいと思ったことはありません。辞めていった人たちもいっぱいいますが、最終的には本人の問題ですから辞めるのを止めることはできないですね。

 そこで続ける人とやめる人との分かれ道はどこにあるんでしょうか。

 ものすごく鈍感な人か能天気な人でないと、つまり、ストレスをため込まないタイプの人でないとなかなか続けられないかもしれません。(笑)

 例えば、私も、無実だと思っていたのに有罪判決を受けたらとてもショックですけど、少しオーバーに言えば、寝たら次の日には新しくスタートできるようなタイプです。そういうタイプでないとなかなか続けるのは難しいと思います。

 弁護士の仕事のいいところでもあり、悪いところでもありますが、同時に何件もの事件を抱えています。ある事件でとてもストレスを抱えても、目の前の次の事件をやらなければならない。そのことで多少、救われているところはありますね。

 弁護士にはワーカホリックな人が多いですか。

 いろいろなタイプの刑事弁護士がいますが、私は趣味と兼ねている、あるいは好きでやっているみたいなところがあります。

 では、仕事と休みの境界線がないんですね。

 まったくないです。

 お休みの日でも、「あっ、あれ」みたいな感じで、常に事件のことを考えている感じですか。

 そうですね。休みという感覚はあまりありません。もちろん予定が入っていない日もありますが、それは休みという感覚ではありませんね。仕事が入っていても、別に仕事の日という感覚もないので。

 裁判所が土・日開かないので、事実上、土・日に裁判をやることはありませんが、もし土・日も開いてくれるなら、その方がうれしいです。

 好きでやっているということでは理解できますね。漫画家もそういうところがあります。

 刑事弁護には、起訴されるまでの「捜査段階」と起訴されたあとの「公判段階」の2つがあります。起訴前は土・日は関係ないのですが、起訴後の公判は「月~金」で審理しています。捜査段階はとても大事で、ご存じのとおり、起訴されたら99.9%有罪になります。このように統計で見ると、公判はかなり勝ち目がありませんが、刑事弁護人としては公判の方が楽しいですね。

(2021年02月22日公開) 

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