「袴田事件教訓に」再審法の早期改正に向けて、弁護団が議連に要請


柴山昌彦・議員連盟会長(右から2番目)に要請書を手渡す袴田弁護団の小川秀世弁護団長(左から2番目)(2025年12月4日、東京・永田町の衆議院第二議員会館にて。撮影:刑事弁護オアシス編集部)

袴田国賠弁護団が議員連盟に要請書を提出

 議員立法による「再審法」改正の早期成立を求めて、12月4日、袴田事件国家賠償請求訴訟弁護団(袴田国賠弁護団)が東京・永田町の議員会館を訪れ、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(議員連盟)に対して要請書を提出した。

 要請書は法制審議会における後ろ向きの議論を批判し、議員連盟が承認し、野党6党が共同提案した再審法改正議連案(第217回国会衆法第61号)の早期の審議入りや、その道筋を確認するために速やかな議員連盟総会の開催を求めるものである。特に、袴田事件を踏まえ、「幅広い証拠開示規定の新設」と「検察官抗告の禁止」を軸に、一刻も早い再審法改正案の成立を求めている。

 議連案は、すでに今年6月衆議院に提出されている。しかし、いまだ審議に入っていない。

 弁護団から要請書を受け取った柴山昌彦・議員連盟会長(自民党・衆議院議員)は、「袴田事件を大きな教訓として、このような人権侵害が二度と起きないようにするための法制度が極めて重要」と述べ、「今日の要請書の趣旨を踏まえて仲間たちと協議していきたい」と意気込んだ。

 逢坂誠二・議員連盟幹事長(立憲民主党・衆議院議員)は、国会内の議論が滞っている現状を挙げ、「こうした状況の中で弁護団の皆様から要請をいただくのは心強い」と語った。

 小川秀世弁護団長は、議員連盟に対し、袴田事件では新証拠、すなわち「5点の衣類」以外に取調べ録音テープなどが開示されたことを例に挙げ、「袴田事件を見れば証拠開示の範囲を限定するのがおかしいということがわかる」と強く訴えた。

記者会見に出席する袴田ひで子さん(2025年12月4日、静岡県静岡市・記者クラブにて。撮影:袴田さん支援クラブ)

静岡市内で弁護団記者会見

 要請書提出後、弁護団は静岡市内で記者会見を開いた。会見には袴田巖さんの姉・ひで子さんと、日弁連再審法改正推進室長で法制審議会の委員も務める鴨志田祐美弁護士も同席した。

 袴田ひで子さんは「議員連盟はジェスチャーだけで終わってもらったんじゃ困る。盛り上げていってもらいたい」と訴えた。

 小川弁護団長は、議員連盟への要請行動について、「議員立法で実現していくという姿勢が見られ、非常に頼もしい」と評した。そして、「今の法制審議会の議論を待って立法ということでは、改正法がむしろ現状よりも後退しかねない。弁護団としては、議員連盟のほうで立法に向けて活動してほしい」と語った

 弁護団の白山聖浩弁護士は、「袴田事件では、検察官がないと言っていた証拠が実はありました、ということが何度もあった。弁護士が証拠を幅広く確認できる状況にするということが、冤罪被害がなくなるための重要なステップになる」と指摘した。

 同じく弁護団の西澤美和子弁護士は、「裁判官が一度でも再審を開始すべきだと判断したのなら、それは疑わしい状況と言える。検察官が抗告できる制度はあるべきではない」と訴えた。

 会見に同席した鴨志田弁護士は、「袴田さんの再審は確定までに43年かかっているが、そのうちの30年は証拠が出なかった30年、9年は検察官抗告で長引いた9年。つまり、43分の39は今の再審法の不備が原因」と語気を強めた。そして、「もともと冤罪被害者の声に耳を傾けなければということで始まったはずの法制審の議論が、いつの間にかそういうことを忘れて理屈をこねるだけになっている」と批判した。

(中)

(2025年12月09日公開)


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