12月7日、京都・龍谷大学で、アジア・イノセンス・ネットワーク大会が開催、人質司法や再審法で情報交換


アジア・イノセンス・ネットワーク大会2025の第2セッション「再審法改正——台湾におけるここ10年の経験から学ぶこと」で、再審法改正について議論する謝煜偉(TIP理事/台湾大学。中央)氏とIPJの川﨑拓也弁護士(右端)(2025年12月7日、龍谷大学にて。写真撮影:刑事弁護オアシス編集部)。

 12月7日、京都の龍谷大学で、「アジア・イノセンス・ネットワーク大会2025——東アジアにおけるえん罪救済のこれまでとこれから」が、イノセンス・プロジェクト・ジャパン(IPJ)、台湾イノセンス・プロジェクト(TIP)、台湾民間司法改革基金会(JRF)、Rashid Zulkifliの主催で開催された。

 アジア・イノセンス・ネットワークは、アジアで冤罪救済運動に取り組む団体が2018年、IPJと台湾のTIPが呼びかけて、立ち上がったもの。今回は、その第4回目の大会。TIPのほか、台湾民間司法改革基金(JRF)、韓国およびマレーシア研究者や実務家が集まった。

 大会では、つぎの3セッションが持たれた。第1セッション「取調べと人質司法」、第2セッション「再審法改正——台湾におけるここ10年の経験から学ぶこと」、第3セッション「死刑とえん罪」。それぞれのテーマについて、詳細な報告と活発な情報交換が行われた。

 とくに、第2セッションは、日本で課題になっている再審法改正を考える上でも、示唆に富むものであった。

 謝煜偉(TIP理事/台湾大学)氏は、基調報告で台湾における10年間の再審法改正について詳しく触れた。

 台湾では、DNA鑑定が問題となった陳龍綺事件が2014年に無罪になったことから、再審制度改革が大きく動き出した(安部祥太ほか編著『見直そう! 再審のルール——この国が冤罪と向き合うために』参照)。2015年から2000年までの一連の法改正で、台湾の再審制度は以下のように確実に発展をとげた。

 再審請求理由の「新証拠」は、新「証拠」でなく、新「事実」であってもよいとされ、明白性の判断方法も、従来の単独評価に加え、総合評価も明文化された。また、記録閲覧について、若干の例外はあるものの原則的に被告人も弁護人と同様に防御権を行使するために、捜査の一件記録を閲覧・入手することができるとする通常審の規定を再審にも準用。再審請求段階において弁護士を代理人として委任できること、再審請求審における口頭弁論の原則化、証拠調べ請求権の明文化などが規定された(日弁連「諸外国における再審法制の改革状況——世界はえん罪とどう向き合ってきたか」参照)。

 最後に、謝氏は「再審制度にとって、日本や台湾の冤罪事件の歴史が私たちに痛烈に教えてくれる教訓があります。再審制度を真に動かすのはただ単に条文ではなく、みなさんの信念・理念そのものです。再審制度は誤った判決から人を救うための最後の砦であるし、再審請求審は請求人が手にした新たな証拠をもって過去の誤りを正す機会を保障する唯一無二の扉です。このこと絶対忘れてはいけません」と結んだ。

 台湾での再審法改正は、裁判所を中心とする司法部によって行われたが、再審法改正の原動力は冤罪救援団体、弁護士団体、そして国民世論に支えられた国会議員であったといえる。

(2025年12月10日公開)


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