
第219回臨時国会が12月17日に閉会し、超党派の国会議員による「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(議連)が作成し、野党6党が6月に衆議院に提出していた再審法改正案(第217回国会衆法第61号)は、今国会でも審議入りならず、継続審議となった。これにより、舞台は来年の通常国会に移った。
昨年9月26日に袴田事件の袴田巖さん、今年7月18日に福井女子中学生殺人事件の前川彰司さんが雪冤を果たし、再審法改正の機運は高まりつつあるものの、その道のりは険しい。
議連は、えん罪被害者の速やかな救済を目的とする再審法改正を早期に実現するために、超党派の国会議員によって2024年3月に発足し、最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、えん罪被害者などにヒアリングを行い、再審法改正案を今年5月にまとめた。
その内容は、①再審請求審における検察官保管証拠等の開示命令、②再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止、③再審請求審等における裁判官の除斥・忌避、④再審請求審における期日指定等の手続規定の4点を柱として、冤罪被害者の適正かつ迅速な救済を目指すものである。
一方で、再審法改正について議論している法制審議会―刑事法(再審関係)部会では、全面的な証拠開示や検察官の不服申立ての禁止に反対する意見が多数を占め、現状の再審制度よりも後退することが危ぶまれる。
12月16日に開かれた同部会の第13回会議に、「今後の議論のための検討資料」が提出され、これに対して、委員の鴨志田祐美弁護士、村山浩昭弁護士・元裁判官、幹事の田岡直博弁護士が連名で意見書を提出して反論した。
同検討資料は、同第12回会議が終了した3日後、法務省の法制審事務局が同委員会委員にも示すことなくマスコミに配った資料と、表紙を替えただけの同一の内容である。
意見書は、同検討資料の内容と法制審議会の議論の進め方を痛烈に批判し、「再審制度の見直しが必要と考えられるに至った原因は何だったのか、その原点に立ち返り、そこから議論すること」こそが「本部会の使命」であると指摘している。
袴田事件では無罪判決までに58年、福井女子中学生殺人事件では39年の年月を要した。両事件において、無罪を示す重要証拠は長年にわたって検察側から開示されず、再審請求審は停滞した。また、両事件ともに一度は再審開始決定が出されるも、検察官抗告によって取り消され、さらに審理が長引くこととなった。現行の再審法の不備が広く再認識された事件といえる。
議連案による再審法改正を求める声は広がりを見せる。12月2日には135名の刑事法学者の声明、4名の刑事法学者の意見書、3日には63名の元裁判官の共同声明が相次いで公表されるなど、専門家の間でも大きな動きが見られた。再審法改正を求める意見書を採択した地方自治体は800以上にも上る。再審法改正を望む市民の声も勢いを増し、9月末から市民団体らが開始したオンライン署名では、1万9000人以上の賛同が集まった。
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(2025年12月18日公開)