漫画家・浅見理都が刑事弁護人に聞くザイヤのオオカミ

第2回 市川寛弁護士に聞く(3)

検察の手の内を知る弁護士

信念と客観性のバランスをとる(3)


仕事はのめり込まず、どこか他人事扱いで

 後輩で刑事弁護をやっている人にアドバイスをするとしたら、どんな感じでしますか。

 そもそも、アドバイスできることが全然ないですね。

 ないですか。

 刑事弁護ができるかどうか、僕にはそんなに自信がありません。体力勝負ですからね。僕はまだ高齢者ではありませんが、30歳の人には勝てませんよ。接見に毎日通えるかどうかがすべてですから。基本、否認事件は毎日通わなければいけないので。

 毎日ですか。

 日々何が起きるかわかりませんからね。

 体力はつけておいたほうがいいと、筋トレとか。

 検察官も裁判官もですけどね、健康第一です。この仕事は、健康を害しやすいのです。僕は検察官時代に鬱(うつ)を2回やっていますから。仕事はどこかで他人事扱いにしておかないと、心身がもたないです。

 前回の坂根真也先生も弁護士の仕事はストレスを溜めやすいとおっしゃっていました。

 検察官より弁護人のほうが、事件にのめり込みやすいのではないでしょうか。その人からダイレクトに頼まれるので、のめり込みますよね。ある意味、のめり込まなければいけないところもあります。だって、依頼者からお金をいただいているわけですから。

 でも、完全に依頼者と同化してしまうと頭が変になります。なぜなら、依頼者にとっては一生の一大事ですけど、弁護士はそんな依頼者を複数抱えていますから。どこまでのめり込むべきで、どこまで冷静でいるべきかのバランスが難しいです。僕は、そこがあまりわかっていません。

 その点、検察官はいいです。

(2021年05月10日公開) 

インタビュイープロフィール
市川寛

(いちかわ・ひろし)


1965年、神奈川県生まれ。中央大学卒。1990年に司法試験(第45期)に合格し、1993年検事任官。2000年から佐賀地検に三席検事として勤務し、佐賀市農協背任事件の主任検事を務める。同事件の被疑者に不当な取調べを行ったことについて法廷で証言し、大きく報道される。その後、被告人は無罪となった。2005年に辞職し、2007年弁護士登録。
 著書に『検事失格』(毎日新聞社、2012年)、『ナリ検』(日本評論社、2020年)などがある。

インタビュアープロフィール
浅見理都

(あさみ・りと)


漫画家。1990年、埼玉県生まれ。『第三日曜日』で第33回MANGA OPEN東村アキコ賞を受賞。『イチケイのカラス』は自身初の連載(モーニングで連載、2018年24号〜2019年14号)。


こちらの記事もおすすめ