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【第6回】被害者に対する示談金・被害弁償金を被疑者・被告人や家族以外の第三者が出してくれることになりました。示談金などを預かるにあたって、何か留意すべき点はありますか【示談金を第三者が出す場合】。


( 注:本稿では、示談金・被害弁償金を一括して「示談金」といいます )

【解説1】 示談金は、できる限り、第三者から被疑者・被告人に交付してもらい、弁護人は被疑者・被告人から預かるようにしましょう。

 弁護人が第三者から直接示談金を預かること自体に職務上の問題があるわけではありません。しかし、弁護人が第三者から示談金を直接預かることは、弁護人と被疑者・被告人または第三者との間の無用なトラブルを招きかねないという側面があることも否定し難いため、気をつける必要があります。

 というのは、示談金の原資(以下、便宜上「資金」ということがあります)に関する被疑者・被告人と当該第三者との間の法律関係(法的性質)は、贈与や消費貸借など、事案によって様々な可能性があるからです。

 注意すべきは、その法律関係がどのようなものであるかによって、もし示談や損害賠償を行わなかったり余剰金が出たりした等の場合には、当該資金ないし余剰金の返還先が変わってくるということです。

 たとえば、示談金の資金が贈与された場合には、示談や損害賠償を行わなかったときでも、その資金を第三者に返還する必要はありません。これに対して、もしその資金が単純に貸与(金銭消費貸借)されただけであった場合には、いつかはその資金を第三者に返還すべきこととなり得ます。

 このような法的性質は、当事者間ではあらかじめ明確にされていないことが多く、後になって当該資金の返還義務をめぐるトラブルが発生することがあります。弁護人としては、この種のトラブルに巻き込まれないようにする必要があります。

【解説2】 それでは、第三者と被疑者・被告人との間の資金のやり取りに介在しないようするにはどうすればよいでしょうか。

 示談金を第三者が出す場合に自分の身を守るための方法の一つとして、弁護人はできる限り、第三者と被疑者・被告人との間の資金のやり取りに介在しないようにするという方法があります。具体的には、第三者から被疑者・被告人に当該資金を交付してもらい、その後で、被疑者・被告人から弁護人がその資金を預かるようにするという方法です。

【解説3】 被疑者・被告人が身体拘束されている場合であっても考え方は同じです。

 被疑者・被告人が身体拘束されている場合であっても、まず第三者から被疑者・被告人宛てにその資金を差し入れてもらった上で(接見禁止が付いているときであっても、お金は第三者からでも差し入れることができます)、弁護人は被疑者・被告人からその資金の宅下げを受けることができます。

 こうすれば、万が一後に当事者間でその資金の返還義務をめぐるトラブルが発生したときでも、その後、その資金を被疑者・被告人が第三者に返還する必要があるか否かは当事者間の問題であり、弁護人としては、当該資金を被疑者・被告人に交付(身体拘束されている場合は差入れ)すれば、弁護人が当該トラブルに巻き込まれる可能性は少なくなります。

【解説4】 勾留満期や結審等の期限が迫ってきて、第三者から被疑者・被告人を介して示談金を受け取るには時間的余裕がない場合は、弁護人としては、勾留満期等の期限までの間に示談を成立させるべく、第三者から直接示談金を預かりたくなることがあります。そのときどうすべきでしょうか。

 このような場合、弁護人が第三者から示談金を直接預かるか否かについては、自分の身を守るという観点から、積極・消極のいずれの立場もあり得るところです。

 このような場合には、以下の2点を再度考える必要があります。

 ①  【解説1】で述べたように、被疑者・被告人と第三者との間の法律関係ひいては資金の返還先はケースバイケースであり、慎重な検討が必要であること。

 ② ①の法律関係の検討にあたっては、両当事者の属性や従前の経緯等も含めた関係性の見極めが必要であること。

 もし①・②の見極めを誤ると、弁護人が、被疑者・被告人または第三者との間でトラブルを抱えることになりかねません。

 これらの点から、あくまで最終的には具体的な状況に応じての判断によるものの、基本的には、時間的余裕がないと感じる場合であっても、上記2点を踏まえた被疑者・被告人と第三者との間での契約書等の書面を作成しておいた方が安全です。

 また、そもそもの弁護方針として、時間的余裕がないような事態を極力招かないようにすることが大切です。具体的には、時間との関係にはなりますが、被疑者・被告人が第三者から資金の交付を受けたことを確認できて初めて、具体的な示談または損害賠償に向けた行動を開始することが望ましいと言えそうです。

 なお、本稿はあくまで1つの考え方であり、その他の立場もあり得ますし、具体的な状況に応じて別の対応を検討する場合もあり得ます。

 事情により、弁護人が第三者から示談金の資金を直接預かるほかないと考える場合には、上記のリスクがあることを十分に検討した上で預かるようにしましょう。

(2022年06月10日公開) 


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