冤罪(誤判)と再審法改正の最前線 第16回

冤罪(誤判)と再審法改正の最前線 第16回

法制審議会─刑事法(再審関係)部会のリアル⑨

第5回会議(8月7日)[その4]

鴨志田祐美 日弁連再審法改正推進室長


【「再審開始決定に対する不服申立て」について】(50分)

 この論点について部会長から示された審議時間は50分であったが、予想どおり議論は白熱し、1時間を超える討議となった。このため、本論点に限り、実況中継的な形ではなく、整理・要約してお伝えすることをお許しいただきたい。

⑴ 日弁連メンバーの意見

鴨志田:今回の提出資料6「本人等の再審請求に基づく再審開始決定に対する検察官の不服申立て状況等 」によれば、過去に再審開始決定がされた日弁連の支援事件19件のうち、検察官が抗告を行わなかったのは2件だけ。また、検察官が抗告した17件のうち、現時点で再審公判、再審無罪に至らなかった事件は3件のみ。検察官の不服申立てによって審理が長期化し、えん罪被害者の人生における掛け替えのない時間を長期にわたって奪ってきたということは厳然たる事実である。第2回会議でヒアリングの対象となった袴田事件では、検察官の即時抗告によって再審開始の確定までに9年、その後、再審公判で更に1年7か月を要している。

 事務当局の配布資料6の11番の事件は福井女子中学生殺人事件だが、この資料では第2次再審の経過だけが記載されているので、不服申立てが行われていない事例のように見える。しかし、この事件は第1次再審で2011年に出された再審開始決定が検察官の異議申立てによって取り消され、第2次再審で再び開始決定が出るまでに13年を要している。しかも、第2次再審で無罪を言い……

(2025年09月20日公開)


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