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笹倉香奈

『オアシス・インタビュー』第2回

【2/3】えん罪救済センターとSBS検証プロジェクト は何を目指すのか

実務家と研究者との連携

インタビューアー:小石勝朗(フリーライター)


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3 台湾のイノセンス・プロジェクトとの交流

台湾のイノセンス・プロジェクト

小石 台湾のイノセンス・プロジェクトとも交流をしていると聞いていますが、具体的にはどんなことをしているのでしょうか。

笹倉 台湾は2012年にイノセンス・プロジェクトを正式に立ち上げ、かなり活発に活動しています。既に8件か10件の再審請求が通っていて、再審無罪が6件も出ています。そこには、弁護士が2人、専門のスタッフが4人います。そのうちの1人は広報担当で、SNSやグッズの作成など、いろんなことを進めています。また、学生もインターンとして一定期間、活動することができています。

交流のはじまり

小石 台湾では、精力的に活動をしているのですね。

笹倉 私が初めて台湾の人たちに会ったのが2013年で、イノセンス・ネットワークという、イノセンス・プロジェクトが一堂に会する世界大会のときです。世界大会には2012年から行っていますが、その年はアジアからの参加者は私だけでした。翌年に行ったら台湾の人たちが3人ぐらい来ていて、そこからずっと交流しています。

 例えば、シンポジウムがあるときなどは相互に行ったり来たりもするし、日常的に何か問題が出てきたときには「台湾にはこういう専門家はいないか」、「台湾ではこういうのはどうしているの?」と情報交換をしています。

 また、2018年8月には、台湾のイノセンス・プロジェクト年次大会の折りに、台湾の人たちと一緒にアジアのイノセンス・ネットワークの立ち上げ会議もしました。この年次大会のメインスピーカーは布川事件の櫻井昌司さんでした。鴨志田祐美弁護士のピアノで櫻井さんが歌を披露しました。

 アジアにもイノセンス・プロジェクトを名乗っている団体はかなりあります。台湾と日本、タイ、シンガポール、フィリピン、中国にもあります。ただ、中国は政治的な問題でそういう集まりには来られません。

 今回呼びかけたところ、日・台のほかに韓国の人が来ました。イノセンス・プロジェクトではありませんが、えん罪救済をずっとしている人です。また、シンガポール(国立)大学の学生たちがつくった組織があります。その4団体が集まって、お互いの活動内容を紹介し合ったりしました。うちの学生ボランティアも一緒に参加して、英語で活動報告をしてくれました。

 アジアのネットワークは、今後、定例化しようと言っていて、2019年は、6月に日本で開催することが決まりました。

司法関係者が自由に発言できる台湾

小石 台湾の刑事裁判に関する法制度は日本と似ていますか。

笹倉 戦前の日本統治下のときに作った刑事訴訟法を踏襲していますので、似ている部分も多いです。特に再審に関する条文は似ていました。

 最近、台湾の裁判所もこの問題に非常に興味を持っています。日本の白鳥決定の文言のように、合理的な疑いを超えれば再審開始をしなければいけないという判決を、最高法院が2015年に下しました。いろいろな改革の試みはあるし、DNA鑑定法も2016年に成立しました。

 台湾のイノセンス・プロジェクトの創立者の元理事長は、大臣として入閣しています。

 台湾のすごいところは、検察官や裁判官もイノセンス・プロジェクトの年次大会に来て、自由に意見を言っていることです。

 20188月の大会の開会の挨拶は台湾の検事総長でした。えん罪はかならず起こり得るので、検察としてもきちんと取り組んでいかなければいけないという内容でした。

 実は、台湾の検察庁は、組織の中にえん罪救済部門をつくったそうです。今、アメリカでは、検察庁の中にえん罪救済部門をつくるのがトレンドになっています。それをイノセンス・プロジェクトに関わっている台湾の研究者が紹介して、検察庁が飛び付いたということです。人気取りだという意見もありましたが、検事総長が出てきて「えん罪というのはやっぱり問題である」ということをきちんと発言しているのは、日本人から見ると衝撃です。日本の裁判所や検察庁ももう少し柔軟にいろいろな意見を言ってもいいと思います。人間は誤りを犯してしまうのです。あってはならない誤りが起きてしまったとき、裁判所も検察庁も、そのことに正面から向き合うべきでしょう。

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用語解説

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